第3話 土着性幻覚症対策実務者ミーティング
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(日 時) 平成28年12月7日10時00分~10時25分
(場 所) 会議室C
(出席者) 鹿糠統括、新沼戦術部長、黄川田法務・渉外部長、稲垣情報部長、大槻研究・開発部長、小原財務部長、事務局秋篠
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<議事内容>
〇鹿糠統括
皆さん、お集まりいただきありがとうございます。
新沼さんも戻って早々に申し訳ありません。
〇新沼戦術部長
いえいえ。
〇鹿糠統括
それでは、速報レベルでは既に聞いておりますが、今一度事案と現在の状況を整理していただければと思います。
〇稲垣情報部長
はい。本件はいわゆる土着性幻覚症案件というのは事前資料のとおりです。つまり、特定地域の住人や通行人が幻覚症状を発症し、最終的に死亡や行方不明に至るリスクのあるケースですが、本件では初期対応が完了しており、今後所定の手順どおりデコイ及び塩室で対処する予定です。
〇鹿糠統括
所定の手順の効果性について、本件に特段の事情はないということでよろしいでしょうか。
〇稲垣情報部長
結論としては所定の手順で対応できると判断しております。
なお、10年ほど前にフリーランスの宗教的活動家が本件幻覚症の治療を試み、失敗する映像記録があったため当部で確認しましたが、それらはあくまで民間療法にとどまる対応でしたので、特に問題はありません。
〇鹿糠統括
ありがとうございます。
もう一点、土着性幻覚症案件となると、本件も原因の特定は困難ということでしょうか。
〇稲垣情報部長
はい、お察しのとおり、他の事例と同様に原因特定はできておりません。可能性としては、月並みですが、現地の磁場などの物理的環境、土着性のウイルスや細菌、伝承等を信じる住民に生じるストレス、又はこれらの複合的要因などが考えられます。
〇鹿糠統括
調査リソースを割いたところで、ということですね。
すみません、逸れました。続けてください。
〇新沼戦術部長
初期対応の補足ですが、本件幻覚症では対象地から隔離することが伝統的な対処法とのことで、当部にて発症児童を都内まで護送しました。対象地から約50キロ離れた地点で実際に本件幻覚症状がおさまっており、以降現在まで再発はありません。
〇大槻研究・開発部長
デコイと塩室は当部で準備中です。デコイについては血液循環器系の最終確認中で、使用する児童の血液と毛髪については現在法務で手続を進めてもらっています。塩室については明日トレーラーへ積み込みの予定です。
〇黄川田法務・渉外部長
はい、ちょうど本日、児童の保護者から承諾書と児童の毛髪の提供を受けました。児童が入院している当財団関係の医療機関と連携し、児童の体調を考慮しながら近日中に採血を実施できればと考えております。
〇鹿糠統括
本件では大丈夫だと思いますが、塩室の在庫は問題ないでしょうか。
〇大槻研究・開発部長
このペースですと5年程度で塩室の空きがなくなる可能性がありますので、増設のため南仏から塩壁を再度取り寄せたいと考えております。
〇鹿糠統括
財務とも相談しながら適宜進めてください。
〇小原財務部長
大槻さん、購入費についてはアフリカ支部設立予算から支出できると思いますので、後でお話ししましょう。
〇鹿糠統括
よろしくお願いいたします。
〇新沼戦術部長
当部はデコイと塩室が手配でき次第、いつでも現地に運搬できる体制を整えております。
〇鹿糠統括
よろしくお願いいたします。
ちなみにこの手の案件では特有の事情から対応方針に差異が生じることがありますが、本件でもそのような事情はあるでしょうか。
〇稲垣情報部長
ご指摘のとおりでして、本件では児童の父親をデコイの運搬、都内から現地、現地から隔離施設ですね、こちらの行程に同行していただく可能性があります。
本件幻覚症を発症すると、大柄な女性のような幻覚を見たり、この幻覚が発する「ぽぽ」「ぽぽぽ」といった幻聴が聞こえたりするのですが、幻聴については発症者のそばにいる血縁者も聞こえることがあるようです。発症者を地域から遠ざけるために移動する際、できる限り発症者の血縁者を同行させ、まさにデコイとして使う風習がありましたので、今回それに倣って児童の父母に同行してもらったところ、父親にも児童と同様の幻聴が聞こえたとのことです。
〇鹿糠統括
作戦ではデコイの効果測定として父親に同行してもらうイメージでしょうか。確実性と父親の安全性に懸念があるように思いますが。
〇稲垣情報部長
同じ認識です。そもそも例によって本件幻覚症の原因が現地の磁場などの物理的環境、土着性のウイルスや細菌、伝承等を信じる住民に生じるストレス、又はこれらの複合的要因なのか不明ですので、血縁者における幻聴のメカニズムも同様に解明できていません。
同行についてはまだ可能性の検討段階でしたので、今回父親は同行させないということで進めていきたいと思います。
〇鹿糠統括
そうですね。よろしくお願いいたします。
その他報告事項はあるでしょうか。
〇黄川田法務・渉外部長
関連事情について報告したいと思いますが、情報部の方から地蔵の件について説明していただいてもよろしいでしょうか。
〇稲垣情報部長
はい、現地には●●地区を囲むように5体の地蔵が設置されておりまして、地区に通ずる道の両脇などにですね、本件幻覚症はこの約200㎡の範囲内に立ち入った子どもの一部に発症してきました。地元の方は、●●地区を囲むようにして設置されている地蔵には本件幻覚症が広まるのを抑える効果があるという趣旨のことをおっしゃっていました。本件幻覚症の一因に特定のストレスが含まれるとすれば、地蔵はこのようなストレスを緩和する機能を有していた可能性があります。
〇黄川田法務・渉外部長
ありがとうございます。そして、報道もなされているのでご存知の方もいるかもしれませんが、今月に入ってから●●県内各所の仏像や石像が破壊される事件が起きており、破壊された仏像の中には●●地区の地蔵5体も含まれていました。●●地域の全ての地蔵です。
まだ犯人が捕まっておらず、実際に●●地区外の家庭で本件幻覚症の発症者も出てしまったことから、現地住民に動揺が広がっているという状況です。
〇鹿糠統括
本件幻覚症について長い歴史がありそうな集落ですが、流石に今回は緊急事態ということでしょうか。
〇黄川田法務・渉外部長
はい、流石にそのようです。これまではどこどこの家の子どもがやられたからあと何十年は大丈夫だ、ですとか、何十年に一人やられるだけなのに畑を捨てて他所に移れるか、というような、良し悪しは別として、そのような考え方で本件幻覚症と付き合っていたようです。経年劣化や事故などで地蔵が破損した場合でもすぐ代わりの地蔵を調達して対応していたそうなのですが、これまで発注していた仏師の方が5年前に亡くなってしまったため、同等品を作れる仏師を探さねばならないそうです。
また、この地域にも多数の被災者が避難されているのですが、彼らはこういった地域の事情を知らないため、事態が続くといずれパニックになるおそれがあります。
〇鹿糠統括
対応を急ぐ必要がありますね。
解決した場合は地蔵は必ずしも設置しなくていい気もしますが、地域の方の安心のためには設置した方がいいのでしょうね。
〇黄川田法務・渉外部長
数年がかりになるかもしれませんが、自治会で地蔵の手配を進めるそうです。
〇鹿糠統括
犯人が本作戦を妨害するリスクについてはいかがでしょうか。
〇黄川田法務・渉外部長
犯人の正体が判明しないため、リスクなしとは言えません。不測の事態に備えるよう戦術部に警戒を要請しています。また、警察庁経由で県警の捜査状況を確認していきます。
〇新沼戦術部長
この件については警備要員を増やすことで対応予定です。
〇鹿糠統括
わかりました。
他に共有すべき事項はあるでしょうか?
ありがとうございます。それでは今日の内容をベースに明日の理事会資料の作成の方もお願いします。
明日はよろしくお願いいたします。
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<付記:事件経過>
平成28年
12月9日 9時00分作戦開始。22時32分デコイの塩室収容完了。
12月10日 仏像大量破壊事件の犯人逮捕。外国人による単独犯であり、動機は不明。
平成31年
3月29日 自治会による地蔵再設置。この間、発症者なし。
よりよい社会のための検討会議 平原 富 @TomHirahara
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