鼓動
今月も陽介おじさんの家に遊びに来ている。
帰りの駅の改札を目の前にしたところで、陽介おじさんと来月の予定を合わせるのを忘れたことに気付く。
別に帰ってから連絡しても良いんだけど、改札を通る前だったし、
「あ、ごめん。おじさんに来月の予定聞くの忘れたわ。ちょっと行ってくるから、改札入って待ってて。」
と冬和菜に伝える。
「分かった、待ってる。」
俺は駆け足で陽介おじさんの家に戻る。
ちょっと汗をかいたところで陽介おじさんの家の前まで着き、
家の扉を開けると、
陽介おじさんがあまり聞いたことのない声を上げている。
俺は玄関に足を入れることはできないが、
扉を開けたまま陽介おじさんの声に耳を欹てる。
修。。。なんでだろうな。
冬和菜ちゃんは良い子なんだよ。
それは分かっているんだけどな。
でも、心のどこかで笑えない自分がいるんだよ。
思ってはいけない気持ちが出てしまうんだよ。
なんでここにいるのが、笑っているのが、
修、お前じゃなくて、あの子なんだろうって。
ごめんな。
修にも、あの子にも悪いんだけど、
どうしてもそう思ってしまうんだよ。
そう思ってしまう自分が嫌で、憎くて仕方ないんだよ。
― なんだ、何が今起こっている ―
俺は今の状況に理解が追い付かず、どうしたら良いか分からないでいる。
それとともに鼓動が激しく動く。
手が震え、思ったように動かせないが、
おじさんに気付かれないように、できる限り静かにゆっくりと扉を閉める。
― カチャッ ―
閉まった。
音は大きくならなかっただろうか。
おじさんに気付かれなかっただろうか。
俺は閉まった扉の前で、更に激しくなった鼓動に、足を動かせないでいる。
何秒、いや何分経っただろうか。
少し落ち着きを取り戻し、何とかおじさんの家から、数メートル離れることができた。
冬和菜に、
「ごめん。話が長くなりそうだから、先に帰ってて。」とメッセージを送る。
冬和菜からは、
「了解」の絵文字がすぐに届いた。
俺は良かれと思って。
良かれと思って。。。。
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