外野

「陽介おじさん、また来るね。」


「うん。冬和菜ちゃんも、また待ってるね。」


「はい。またお邪魔させてください。」


俺と冬和菜は、これまでファミレスで過ごしていた時間を、

陽介おじさんの家で過ごすようになっていた。


帰りの道中、

俺はいつも通りに冬和菜の車椅子を押しながら最寄りの駅まで送っていた。


すると、

通りすがりの人達がこちらをちらちらと見ながら、

「あら、あの子達若いのに大変ね。」

「付き合ってるのかしら。」

「彼氏さんは優しい人なのね。」

と声が聞こえてくる。


これは今日に限ったことではない。


冬和菜と一緒にいると、時々聞こえてくる。

じろじろと見られる感覚に襲われることもある。


その時、冬和菜はいつも下を向いてしまっている。

表情は分からないが、きっと気分は良くないだろう。


俺の何を知って、優しいと口に出しているのか、

俺たちの何が大変だと思っているのか。


俺たちはただ、友達と会っているだけ。


俺にとっては、どうでも良い外野からの声であっても、

きっと冬和菜にとっては一つ一つが辛いものなのだろう。

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