2年後

「智―、サークル一緒に行こうぜ。」


「おう!」


あれから2年。

俺はそれなりの勉強の末、予定通り上京し、都内の大学に進学し、一人暮らしの生活を満喫している。

大学に入ってすぐにできた友人に誘われて、気楽なサークルにも所属することにした。


「あ、ごめん。俺バイトの時間だわ。」


「そうか、気を付けてな。」


アルバイトに向かう途中、たまにすれ違う2つの背中。

1人は、制服を着ているし、たまに違う人だからおそらく業者だろう。

もう1人は、車椅子に乗っているおばあさん。

和気あいあいと楽し気に話をしている時もあれば、無言で歩いていることもある。

こうしていると、いつも修を思い出す。


じいさんの家でしか見かけることはなかったが、

修はよく笑い、元気の良い子であった。

家の中でもたびたび転んでいたが、それでもよく笑っていた。


いたずらやクイズが好きで、俺はよく標的になっていた。


陽介おじさんには、「いつもありがとうな」と言われ、

周りの大人たちには、「智仁は将来、保育士さんだな」と勝手に言われ。


そんな大人たちの期待(?)とは裏腹に、俺は何にも考えずに文学部に進学した。


母さんが陽介おじさんに「智仁が東京に行くから気にかけてあげて。」と話をしてくれていたらしく、陽介おじさんには何度か飯に連れて行ってもらっている。


そういった援助もあり、それなりに充実はしていると思う。


『将来やりたいことなんて大学行きながら考えれば良いや』くらいの気持ちである。

アルバイトもそれほど考えることなく選択した。


「アイツは元気にしてるかな。」

修と共に思い出すアイツ。

名前も知らないし、正直顔も微妙に覚えていない。


でも、なぜか俺は、大学が夏休みに入る翌日から一週間、バイトを休んで、あの場所に向かうことに決めていた。

自分一人では行ったことのなかった場所だが不安はなく、むしろわくわくの方が勝っていた。

親には「バイトがあって時期が合わせられないから、一人で墓参り行ってくる」と伝え、移動費だけ頂いた。

ちび達のことは気になるが、それよりも『集まり』には同席したくはなかった。

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