お手伝い

「さすがに今日は勉強しよう。」


今日は雨。朝ご飯を食べた後はしばらく机に向かっていた。

ちび達も連日の疲れなのか、今日はゆったりしている。


「智仁、いるならちょっと手伝ってくれない?」

母さんからの要請だ。

ちび達の部屋に、ひょっこりと顔を出している。

俺が受験生であるにも関わらず、母さんは『宿題』のことは聞いてくるが、『受験勉強』のことには一切触れてこない。

こうして手伝いを頼んでくることで、興味が無いとすら思えてきてしまうくらいだ。


「智仁、聞いてるのー?」


「はいはい、今いくよ。」


「用事があってみんな出ちゃってるから、今日は母さん一人で晩御飯の支度するのよ。だから、あんたも手伝ってね。」


「なんかさっき出て行ってたけど、父さんもみんな行っちゃったんだ。」


「色々あるみたいだからね。」


「え、でも、まだ昼の11時だよ?こんな時間から準備すんの?昼飯だってまだなのに。」


「母さんたちは、昼はもう済ましてるから。それにここの夜は長いから、たくさん必要なのよ。いつもそうでしょ?」


「まあ確かに。ちび達も、あんだけ夜うるさいのによく寝れるよなって思うし、父さんたちもよくあれだけ毎日騒げるよなって思ってるよ。」


「みんな仲が良いからね。じゃあ、始めるわよ。」


母さんの料理の手伝いは初めてではないが、総勢10名分プラスおつまみやらなんやらで大量に作る必要があるらしく、俺は母さんに指示されるがまま働き続けた。


父さんたちの「ただいま戻った」の声で、ようやく時計をみると、15時30分。


「じゃあ、智仁。第1弾をテーブルに運ぶわよ。」


「了解。」


第1弾をテーブルに運びきった後、

「智ちゃん、ありがとね。」「後は、私たちでやるからね。」

とおばさんたちに言われ、俺はちび達のいる部屋に戻り、勉強をしようと机に腰掛ける。

が、

その気持ちも「ともにぃ、あそぼー。」の声によりかき消された。


― 今日は一日、遊んでやれなかったからな ―

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