フライパン
「おっす。」
「ようこそようこそ。」
また、2日おきくらいに来るとも伝え、
5分10分のずれはあるが、俺は何となく同じ時間に来ているのだが、
それでもいつも女は俺よりも先にテトラポットの近くで待っている。
ずっと待ってるわけではないよな。。。
女に質問したい気持ちもあったが、それが正解だった場合にはとてつもない罪悪感にさいなまれそうなので、あえて聞くことを避けていた。
「ともに君さぁ。これ分かる?」
「ん?何?」
「クイズです。」
「クイズ?」
何となく、この唐突な感じにも慣れてきた。
「はい。では第1問。探している人に会える県は、どこだ。」
「んー。さがしているひとにあえる県、、、か。」
一応付き合って考えてはみるが、
「制限時間は各30秒です。」
「なかなか厳しいな。というか、各って何問かあるのか。」
「そうなのです。」
女は自慢げに答える。
「そうか。まあ、色々考えてくれたのね。」
「そう、色々考えたのです。なので、どんどんいきますよー。次、四角いボールって、どんなボールでしょう。」
「え、さっきの答えは?」
忙しないにもほどがある。。。答えもちょっと気になる。
「それは宿題にしておきます!30秒経ってしまったので、どんどんいきますよー。」
「宿題って。」
「さあさあ、次々いきますよ。元気なのに毎日病院に通っています。なぜでしょう。今のところ、正解はゼロです。」
「いやいや、もう問題の内容覚えてないんだよ。正解どころか、回答すらできてないのよ。」
「そうは言っても時間は待ってくれないのです。じゃあ、次。パンはパンでも食べられないパンは?」
「フライパンでしょ?」
これは即答レベルで助かった。
「ぶぶー。はい、ひっかかったー。」
女は食い気味に、笑いながら言う。
「え?なんで?よくあるやつじゃん。」
「違います。だって、フライパンは、パンじゃないじゃん。」
「ん、あ。お、おぉ。それはまあ確かに。なら、正解は?」
「アンパンマンの顔、でした。」
「いやいやいや。それこそ違うでしょ。色々と。」
「色々とは?」
「1つは、そもそも現実に無い。もう一つは、あれはどちらかというとマン、人の方だ。そして、更にアニメの中で実際に食べている。」
「んー。なんかつまんないなぁ。現実主義、というか。あくまでなぞなぞだよ?固い固い。」
「そっちが先に、フライパンはパンじゃないって、現実っぽいこと言ってきたんじゃんか。ってか、アンパンマンの顔、食べられないって何?」
「なんかかわいそうで、きっと食べられないかな、と。あと、顔だったものを食べるって、ちょっときつい。」
「おまえの方が、よっぽど現実っぽい理屈じゃん。」
「まあまあまあ。あ、そろそろ戻るね。」
「ああ、じゃあ、また。」
お互いに手を振りながら、数メートル先にある防波堤まで歩く女を、俺はその場で見送る。
俺はその後目を瞑りながらゆっくりとする時間を堪能する。
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