日だまりのように優しく、夕日のように切ない物語

命は「心」によって、どこまでも輝けるしどこまでも優しくなれる。読後はそう思えました。

砂時計のようにすり落ちていく命を前にして葛藤し、苦悩し、それでも連の心は不器用ながらどこまでも優しい。読んでいて、彼の健気で優しい毎日がずっと続いていけばいいのにと願わずにはいられません。

また、作者様の筆致にも一切の気負いはなく、飾らない言葉と誇張のない表現で綴られる光や音、水の流れなどの自然物の描写が本当に「自然」そのもので美しいです。

そして一人称で語られる蓮の心の言葉が本当に真っすぐに伝わる。行間も読みやすく、あっという間に没入して一気読みしてしまいました。

好きなシーンは数ありますが、中でも「4月2日 (永遠の春)」が好きです。

限られた時間の中で、あえて「退屈な時間」を過ごすことにする二人の感性が好きです。読んでいて、命や時間や風や川が流れていくその瞬間が、連と百合にとっては永遠のものとして記憶される瞬間のように感じられました。

本当に素敵な作品を読ませていただきました。

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