第4話 地下2階、開通!調理器具ドロップで、キッチン革命。




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「ダンジョンに、地下2階ができてました」


そんな軽いノリで始まった週明けの火曜日。

家族が出かけ、静かになったキッチンで、美咲はエプロンのポケットから**《小さな鍵》**を取り出していた。



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前日に、階段下のダンジョンを掃除していたら突然“ガチャッ”と音がして、

階段の横にある壁がスライドし、下へ続く螺旋階段が出現したのだ。



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「え~~、なんかダンジョンっていうより地下倉庫って感じよね、相変わらず」


美咲が降りると、そこは棚がびっしり並んだ小部屋だった。


湿気や魔物の気配はなし。かわりに——



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【キッチン系アイテム陳列フロア】


魔法炊飯器ふっくら釜

✦ 自動スープメーカー《ポタくん(初期型)》

業炎のキャセロール:魔力で煮込み性能アップ

包丁銀精の刃:硬い食材もスパッと



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「うわっ、えっ、なにこの未来家電ショップの裏口みたいなノリ!!?」


しかも、どれもピカピカ。横には「ご自由にお持ち帰りください」の看板まであった。



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✦ 初ゲット! 調理器具ドロップ!


とりあえず、美咲は《ふっくら釜》と《銀精の刃》をお持ち帰り。


ダンジョン出口(=台所床のハッチ)を開けて、手際よくキッチンに搬入。

見た目はシンプルな白釜と、すこし青く光る包丁。



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「よーし……まずはお米よ!! 主婦といえばお米!!」


米を研ぎ、セット。スイッチオン——


【炊飯開始:魔力炊きモード】


「魔力炊き!?」


炊飯器がほのかに光り、湯気とともにふんわりと香りが立ち上る。

炊き上がったご飯は、ふっくらつやつや、米粒ひとつひとつが立っていた。



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「これ……米の神が降りてきてるでしょ……!!」


試しに、一膳よそって食べてみる。


「うま……なにこれ……ただの白米なのに……!」


ほんのり甘く、噛むたびに旨味がふくらむ。スーパーの特売米とは思えない仕上がり。



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「これは……弁当の革命が起きるかもしれない!!」



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✦ 翌朝:息子と旦那、絶賛


「うっま! なんだこのご飯! 今日の米、違うよな!?」


「えっ!? これ……おかわりあり!? 弁当にも入る!?」


美咲は満面の笑みで、


「ふふっ。炊き方をちょっと変えてみたの~」


(※主婦の努力ってことにしといてください)



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旦那・真人も感動した様子で茶碗を持ち上げる。


「なんか、もう帰ってからの飯が楽しみすぎて……仕事早退したくなるな」


「こら、だめです」



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とはいえ、内心ではガッツポーズである。


(ついに料理でも、ステータスUP効果付き白米が実装されたわ……!)



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✦ そして昼下がり。ダンジョン探索中。


もふまる(掃除マスコット)を連れて再び地下2階へ。

今日はさらに奥の壁に、新たな「鍵のかかっていないドア」が現れていた。



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ガチャッ


開けると、そこは地下農園のような空間。照明が自動で点灯し、棚にはさまざまな植物が生えている。



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【ハーブ栽培区画】

✦《キュアリーフ》:料理に使うと体力小回復

✦《スリープシード》:眠気を誘う。夜用ハーブティーに◎

✦《ミント・エアリス》:ストレス低減&リフレッシュ効果



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「えっ……うち、ドラッグストア併設してるってこと?」


ハーブの香りにうっとりしつつ、すこし摘んでティータイムの準備を始める。



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(こんなの使ってハーブティー出したら、午後のママ友お茶会が伝説になるわ……!)


とはいえ、まだ秘密にしたい美咲。お茶会はしばらく封印。当面は家族限定の贅沢で。



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ふと、もふまるが足元で転がりながら鳴いた。


「ぴぴっ」


「なぁに、もふまる?……あっ、これ……!」


もふまるの後ろに、透明な宝箱がぽつんとひとつ。



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開けると、中から出てきたのは……



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【家事スキル:下ごしらえ短縮Lv1】

効果:野菜の皮むき、切り分け、下準備などに時短効果。発動中は包丁さばきがプロ級に。



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「きたーーーーー!! 地味だけど超ありがたいヤツーーー!!」



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✦ そしてその夜、美咲は気づく。


ここ数日で——

料理の品数が増えた。お弁当が豪華になった。洗濯が早く終わる。部屋がいつもきれい。


でも、家族はこう言ってくれた。


「お母さん、最近なんかキラキラしてる~!」


「なんか家がパワースポットっぽい」



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それはたぶん、ダンジョンのおかげ。

だけど、それ以上に——


「わたしの暮らしをよくしたい」って気持ちが、ちゃんと形になってきてる。


そんな気がした。



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