第3話 ユリア

「さっさと働きなさい!」

そう言って雑巾を投げつけたのは子供達のまとめ役であるアマンダだ。

「ごめんなさい」

ここの掃除はアマンダの担当だけど反抗したらなにをされるか分からない。下を向いていると「ふんっ」と上から目線でアマンダは取り巻きたちと戻っていった。私は無言で床を拭く。出自の分からない私を気にかけてくれる人はいないしそれでいいと思う。私には楽しみがあるから──


ここは教会の運営する孤児院。私は赤ちゃんの時に教会の前に捨てられたらしい。7歳の今までずっとここで過ごしてきた。みんなには嫌がらせをされるけどここで生きていくしかない。

「みんな、もう寝る時間ですよ。」

シスターの声で子供達は寝室に入り各自のベットに横になる。それを確認したシスターは部屋のランプの火を消した。


みんなの寝息が聞こえる。ユリアはそっとベットから起き上がり周囲を見渡す。20台ほどのベットが置かれている部屋で起きているのはユリアだけだ。ユリアは忍び足で部屋から出る──




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る