猫又娘の大冒険 5
5
森を抜け、少し歩くと遠くにお城が見えました。お城は森に囲まれ、背後には山が
「ねえ、お茶会はあのお城でやるのかしら?」
「まさかっほい。あそこは女王様の住むお城っほい。女王様以外、入れないっほい」
「そうなの?」
そうすると女王様は、あのお城で一人なのでしょうか。だとすると、少し可哀想に思えてきます。
「お茶会は、もう少し歩いたところの庭園でやるっほい」
「庭園!?」
まのは自分が目覚めた花畑を思い出しました。とても落ち着く、美しい花々のあのお花畑です。手入れされていない花畑でも素晴らしかったのです、庭園ともなれば想像もつきません。
「あまり期待しない方がいいなのさ」
ユキミが暗い声で言いました。
「え? どうして?」
「すぐに分かるなのさ」
どういう事だろう、とまのは思いました。命を与えることができる女王様の庭園です。素晴らしい庭園に決まっているじゃないの、とまのは思っていましたが、だんだんとユキミの言っていたことが分かり始めてきました。
森を抜けて道を進んでいると、だんだんと緑が少なくなっていき、代わりに倒れた木や大きな石がゴロゴロとしている道に変わってきたのです。
フクとユキミには、そんな道を一歩進むのにも一苦労だったものですから、まのが抱っこしてあげることにしました。
「助かるっほい」
と素直にお礼を言うフクに対し、ユキミは、
「た、助けてくれなんて言ってないなのさ!」
と強がっていましたが、小声でだけど抱っこさせてあげるなのさ、と言ったのを、まのは聞き逃しませんでした。
二人は小さくて軽かったので、まのは抱っこをするのに苦にはならなかったのですが、進むにつれて道は険しくなっていくので、転ばないように歩くのが大変でした。
「あら?」
フクに汗を拭いてもらいながら前を見ると、ポツリポツリと他の住人と思しき人の列が見え始めました。
キリン、クマ、ミーアキャットなど色んな動物のぬいぐるみみたいな住人。本来ならとてもメルヘンチックで幻想的な光景なはずなのに、歩くのも困難な道と、いつの間にか曇り始めた空のため、さすがのまのも無邪気にはしゃぐ気にはなれませんでした。
「あいつらも、お茶会に呼ばれた連中っほい」
皆、重い足取りでした。お茶会に行くと言うより、刑場に向かうような重々しく暗い行列でした。
「ねえ、こんなところに庭園なんてあるの?」
まのは不安になって聞かずにはいられませんでした。
「ちょうど見えてきたっほい、あれが庭園だっほい」
フクの丸い手が庭園を示します。
「まあ、まあ!」
まのは驚きのあまり、二人を落としそうになりました。それもそのはず、まのが目にした庭園は、大きな岩で囲われた、緑が全くない、まるで火山口のような岩場だったからです。
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