猫又娘の大冒険 4
4
「フロージュ女王って、どんな人?」
右に立ち、先導するフクにまのは訊きました。フクはまのの手を握り、まのが変な方向に行かないようにしているのです。
「この国の女王様っほい。すごい魔法使いっほい」
「そうなの?」
今度はユキミに訊ねます。ユキミもまのの手を握っています。もしかしたら、お茶会に行くのが不安なのかもしれません。
「そうだなのさ。まのみたいに大きくて、すごい魔法を使うのさ」
「どう言った魔法?」
「命を与える魔法!(っほい、なのさ)」
二人が同時に答えました。
「それは本当に凄いわ!」
でも、命を与えるとはどういう魔法なのでしょう? フクやユキミが動けるようにする魔法なのでしょうか。
「ふふふ、あたしが教えてあげるなのさ。ほら、ちょうどあそこにいいものがあるなのさ」
ユキミが指し示す先には、一本の小ぶりな木がありました。そこに、てててとユキミが走っていきます。
「この木をよっく見てごらんなのさ」
まのは言われた通り、木に近づき観察してみました。とても甘い香りがする、不思議な木です。
「変わった実がなっているわ。でも見たことがある気がする……そう、まるでグミのようだわ」
まのの言うとおり、木には実がなっていました。赤、青、黄、紫など色とりどりの、ぷにぷにとした感触の実です。
「食べてみるのなのさ」
言われてちょっと尻込みしましたが、フクもうんうん頷いているので、大丈夫だろうと判断して、赤い実を一つ摘み、少し
「…………ん?」
口に含んだのが小さすぎたのか、味が分かりません。今度は半分に千切って食べてみますが、やはり味がしません。
「ねえ、二人とも。これってどんな味がするの?」
「赤はだいたいりんごかいちごなのさ」
「何の味もしないんだけど」
その言葉を聞いてフクとユキミは顔を見合わせ、何やらコソコソと話しています。
「大きい人には、味がしないのかっほい?」
「知らないなのさ。もしかしたら、味が薄すぎるかもしれないなのさ」
しかしまのの大きな耳には筒抜けでした。
「そっか、残念。味もあなたたちに合わせているのかもしれないわね」
少しがっかりしましたが、仕方がありません。ファーティ・マーティの住人は皆、フクやユキミのように小さいのですから。
少し暗くなりかけた雰囲気を追い払うように、フクが咳払いをし、
「それがフロージュ女王の魔法っほい。命を与える魔法っほい」
と、改めて説明をしました。
「りんごをグミに変えるのが、命を与える魔法?」
「違うっほい、グミがなる木を作ったっほい」
フクが言うには、先ほど見た宝石の木のように、
「そんな凄い女王様のお茶会なら、どんな素晴らしいものでしょう!」
まのは夢見心地です。今までに経験したどんなお茶会よりも、きっと素晴らしいお茶会になるだろうと夢想し、心が躍り出さんばかりです。
しかしフクとユキミの表情は優れません。
「どうしたの?」
「まあ行けば分かるっほい」
とフク。ユキミは行きたくないなのさ、とぶつぶつ不満を言っています。
「ひょっとして、女王様は怖い方なのかしら」
うーん、と二人は腕組みし考えます。
「怖くはないなのさ」
「怖いっほい」
意見が分かれました。
「ユキミ、嘘はいけないっほい。お前、ちょっと震えてるっほい」
「そ、そんなわけないなのさ! あたしは一匹狼猫だから、怖いものなんてないなのさ!」
そう言いながらもユキミの手は、まのの手を探っていました。まのはそんなユキミが愛おしくなって、その手を優しく包んであげました。
「大丈夫、あたしがついているわ。それに命を与える魔法使いが悪い人なわけないわ」
まのは優しく二人の頭を撫でであげました。白と黒の毛並みが波打ちます。
「さ、行きましょう。怖いことなんてないわ。お手手を繋いでいてあげるから、もう怖くないでしょう? それよりお茶会が楽しみ!」
本当はまのも少し怖かったのですが、二人に心配をかけてはいけないと思い、精一杯明るい声で言ったのです。
「まの、道が違う(っほい、なのさ)」
両脇から、笑い声とともに注意され、まのの顔は先ほどのグミのように真っ赤になってしまいました。
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