その五

【柿ピー文芸】つまみ小咄


『ごま塩の夜』


おにぎりは、塩がええ。

それも、ぎゅうっと握らず、ふわっとな。


……てのを、死んだばあさんがよく言ってた。


「しっかり握ったら、ほどける隙がないやろ?

それじゃあ、人間も、おにぎりも、息できんわ」


ふわっと握って、ごま塩をひと振り。

そしたら、なんか、夜がやさしくなった気がした。


そういう晩に限って、思いがけない手紙が届いたり、

誰かが「元気してるか?」って連絡をくれたりする。


世の中、ぎゅうっとし過ぎてるだけかもしれんな。

ほら、あなたも、今夜はごま塩にしてみ?



その五・完

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柿ピー文芸・掌編集 笹村平六 @hrst46-kw

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