その四

【柿ピー文芸】つまみ小咄


『つまようじの詩(うた)』


「つまようじの使い方って、品が出るなあ」


そう呟いたのは、初めてふたりで呑んだ帰り道。


「刺して終わるか、払って終わるか。どっちにしても、“終い方”の話やから」


目の端に、わずかに残った涙のような酒。


おでんの大根をひと口で頬張る姿が妙に愛しくて、

俺はその日、つまようじを、ていねいに畳んで、箸袋に忍ばせた。


それが、最初の恋の形見。


爪楊枝ひとつに、終い方を思う歳になった。



その四・完


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