第4章「文化祭準備」
第4章「文化祭準備」
文化祭の申請は無事に通った。
ガス良し、電気よし、そしてまさかの魔法良し。
ただし魔法に関しては使用に関して条件を一つ出された。
その条件とは、テイクアウト不可、つまりその場で食べてもらうことらしい。
外に持ち出されないように最大限に配慮しろと意味もあるし、食品衛生上もそっちの方が都合がいいのだろう。
もともと俺の料理魔法は時間によって効果が減少していくので気にするものでもない。
場所は校庭の一角を貸してもらえることになった。
屋台というより簡易版海の家を意識したほうがよさそうだ。
許可が出たので俺たちは調理実習室のホワイトボード前に席を寄せ、作戦会議を始めた。
文化祭は準備が大切だ。それは料理と何ら変わらない。
何を作るかを決めて、そこまでの工程を決めていく。
「えー、それじゃあ、調理スペースと飲食スペースはこんな感じで、役割分担と行こうか。
まず機材搬入と設置、作成はレイキ、一人で大丈夫か?」
「大丈夫だ。こういうのは慣れてるしね。人手が必要な時は声を掛けるから頼むよ」
「分かった」
「さすがレイキさん。頼りになる」
聞いた話だと実家は建築関係の仕事らしく、大工仕事は好きらしい。
立ち上げたばかりの部活動だから、使いまわしができる設備などないので素直に助かる。
「次に予算の管理はレタに頼むよ。記録を取って顧問の先生に渡してほしい」
「分かりました。きっちりやります!」
「レタは字が綺麗だし、まとめ方が上手いからね」
「頑張りますね。レイキさん」
レタとレイキが意気投合してうなずき合う。
レイキが乗り込んできたときはひと悶着あったけれど、すっかり打ち解けたみたいだ。
「シャッキン先輩! 私は! 私は!!」
モカが手を上げて話を促してくる。
「モカは俺と一緒に当日の仕込みだ」
以前のたこ焼きでの共同作業の仕事ぶりを見込んでの人選だ。
今回は事前準備が大変そうなので、どうしても人手がいるので、手が欲しい。
「責任重大ですね! あ、そうだ。まだ聞いてなかったのですが、文化祭で何を作るんですか?」
そういえばまだ話してなかった。
文化祭で作る料理としては変わり種ではあると思うが、やってみたいものがあった。
「文化祭は焼き餃子で行く。それも5属性全部だ! 面白そうだろ!」
「5属性ということは管理が難しそうですね……」
レタの意見はもっともだ。
俺もそれは思い当たっていて、一つアイディアがあった。
「管理はしやすいように餃子の皮の色を変えようと思ってる」
「なるほど」
餃子の皮を手作りするときに野菜やスパイス、すりごまなどを混ぜることで色を変えることができる。
それを利用すれば属性の管理も行いやすいはずだ。
「餃子か、そうなると鉄板も必要ね。学校で借りれないか確認が必要か」
「そこはうまく頼んでほしい。去年の俺のクラスが鉄板焼きやってたはずだからできないはずはない」
去年は確か俺のクラスで鉄板焼きのやきそばを販売していたはずだ。
当時の俺は一人で会計係をやっていたのでどういう経由で鉄板を用意したのかはちょっと分からないが。
「この餃子はえっちなことになりませんよね」
「火と水属性の魔法を変更するから大丈夫」
モカも突っかかってくる。
確かに彼女の言う通り服がはじけ飛ぶ魔法は確かにできる。
水を纏い、火を爆ぜさせ、金の光で隠すその条件は今回の五色餃子で可能だ。
だからその魔法を別の魔法に変えてしまえばいい。それだけの話だ。
「本当ですか?」
「そこは信用してほしいとしか」
「前科がありすぎるんです!」
「はい。そのとおりです」
「……味方が辛辣すぎる」
レタも混ざってじとっとこちらを睨んでくる。
その節は本当に悪かったって……。
「ははは、じゃあ脱がされてないのは私だけか」
そんなやり取りにレイキも混ざってくる。
女性三人がそろうとかしましいというが、もはや俺にはなすすべなしだ。
「そんなこといっているとレイキさんも脱がされてしまいますよ」
「いや、別にかまわない。もっと恥ずかしいものを見られてしまっているしな」
「へあ!?」
何、何を見たの俺!?
オーガの種族的な文化の琴線に触れてしまったのか。
いや、そんな素振りは見受けられなかったはず。
「あんなとろけた顔を見られてしまったからには、責任はとってもらわないとな」
レイキにとって、裸よりも甘いものを食べた時のにやけ顔を見られる方が恥ずかしいみたいだ。
その基準値が分からん。
知ったつもりでいたこの世界の住人のことが本当に分からなくなってきた。
「責任を、取るほど……なのですか?」
「冗談だよ冗談! まったく真面目だなシャッキンは」
はっはっはっと、どこまで冗談か分からない顔で言ってくるので俺は頭を軽く掻いた。
最近、弄られることが多くなった気がする。
「とにかく役割分担は以上で! 進捗を確認しつつ、各自どんどん進めていこう」
「はい!」
「わかりました」
「任せろ」
慌ただしく、ちょっと大変だが、楽しくなってきた。こういう感じを久しぶりに味わっている気がする。
俺が段取りを頭の中で整理していると、モカがひょこりとそばに寄ってきた。
「シャッキン先輩何ニヤニヤしてるんですか?」
「……いや、なんでも」
「怪しいですね。あ、やっぱりレイキさんの裸を画策してるんじゃ―――」
「違うわい」
俺は彼女に軽くチョップした。
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