プロローグ 2 祈り娘(改1)
*サブタイトルを「祈りの乙女」→「祈り娘」へ改題しました。
内容は変更有りません。
◇祈り
「――というわけで、この度はこちらの魔導学院研究部の方々と同行してもらうことになった」
ククルカンの冒険者ギルド長、バヌトゥクが、どこか含みのある顔でそう言った。
つまり、俺たちはこいつらの護衛ってわけだ。
こういう任務は何かとめんどくさい。
特に研究者なんて連中は、時間を食うし危険も増える。
だが学院は金払いがいい……それだけが救いだな。
こっちの気持ちは顔に出てたらしい。
バヌトゥクはニヤつきながら続けた。
「これは前金じゃ。研究部からの依頼分として、きっちり支払い済みだぞ」
そう言ってサムズアップしてきた時点で、俺たちの選択肢はなかった。
紹介された研究員たちも、いかにもな連中に見えた。
――そうして、俺たちはククルカン砂漠の奥、ターニャの崩落跡と呼ばれるダンジョンへと足を踏み入れた。
隊列は――
冒険者チーム:シュルツ、ペパード(リーダー)、ベネディクト、ラッキング、テュロー、レガルド
研究チーム:クレア(主任)、ヒーズリー(研究員)、フランクリン(副主任)、ベレツ(研究員)
総勢10名の大所帯。
研究員連中の荷物が多くて重くてよぉ。背負ってるのは俺らだって言うのにあいつらときたら……ここまで来るだけで、さっそくへばってやがった。
仕方ないんで、明日の朝からの探索。って事で、こっちは早めに休みたいんだがよ?
あいつらひとつのテントで朝までゴソゴソやってやがった。
なんで、俺らがお楽しみの警護までしてやんなきゃなんねーんだ?(チクショー)
****
翌朝、早くからダンジョン内のゴブリンやオークどもを蹴散らして、探索は順調すぎるくらいだったな。
ただ――
「子供まで殺す必要があったの?」とか、クレアってのと口論があった。
(……悪いが、こっちは命張ってんだ。)
「稼ぎは少しでも多いに越したこたぁねぇ」
(それにな?あいつらぁヤル奴らだぜ?甘っちょろい綺麗事で腹は膨れねぇし、生かして後から犠牲者出すのも後味悪かろうぜ?)
少し緊張が走ったが、その間に他の仲間が片付けてくれた。ま、ゴブリンやオークに情けは不要ってことだ。
****
――そして、俺たちは見たんだ。
ターニャの崩落跡。
その奥、まだ足を踏み入れた者も少ない空間に一歩踏み込んだ瞬間、
空気が変わった。
鍾乳石がシャンデリアのように幾重にも重なって、結晶化した雫が光を鈍く弾く
神秘的な神殿の様な
息をつくのも躊躇われるかのような静謐。
足元に響くのは、誰かの息遣いか、自分の心臓の鼓動か。
そこに、まるで祈るように座して、流れる金髪を肌に纏ったような娘の姿があった。
その髪は、見る角度によって翡翠のように透け、紅玉のようにも
まるで光が七色に分かれ、触れた空気までも煌めかせているかのようだった。
俺たちは、ただ見惚れていた。
――ガチャンッ。
誰かの手から何かが滑り落ち、静寂が破られた。
遅れて、祈り娘は俺たちの気配に気づいたのだろう。振り向いたその顔は、驚きに目を見開いていた。
そして次の瞬間、祈り娘の身体からまばゆい光が放たれた。
反射的に目を閉じる。光が弱まり、目が慣れたときには――
その姿は、もうそこにはなかった。
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