プロローグ:弐 捨てられた孤児
第二話 捨てられた孤児
僕は捨てられた。何故なのか。ただ用済みとだけ言って僕は殺された。一体なんのために従軍してて、どれだけの人間を葬って来たのか。数えるまでもないけれど、 僕の胸に渦巻いていたモヤモヤは、まるで最初からここで解消される運命だったようだ。
僕は殺されたはず? とかそんなこと今はどうでもいい。これは神が僕に用意してくれた憂さ晴らしの機会なんだ。地面に置かれたのは見たことのない形をしたRT-20の改造版。高倍率スコープを覗けば、なにやら崖の下で中世みたいな鎧をまとった兵士がわちゃわちゃしてる。
使用弾は超小型化された20×110mm APFSDS-T。つーかAPPSDS-Tって戦車砲に使う弾なんだよなぁ。こんなもん使ったら、俺の身体が吹き飛びそうだが……。でもそれがあるってことはつまり使えってことなんだろう。
僕は明らかにヤバい形状をした弾を装填し、匍匐姿勢から肩に担ぐような形で構える。そして先ずは誰を殺そうかと標的を選んでいると、崖下すぐにいるこの争いの指揮官らしき兵士よりも、さらに丘の下にいる兵士を見つける。
「おいおい……あれってもしかして……」
確信は出来ないが、他の兵士とは明らかに装備が違う。軍用スーツと暗視ゴーグルを身にまとった兵士が一人。恐らくこれから指揮官を殺りに行くんだろう目をしていた。
僕も同じような部隊に所属していたからなんとなく噂だけ知ってる。アメリカの極秘特殊部隊があんな装備だったような……。
それしか知らない。これは都市伝説レベルの話で、装備の話も仲間の妄想だったかもしれない。だが僕はその姿をスコープ越しで見た後、たまらず引き金を引いていた。だがそれは間一髪で避けられた。
「ったぁ〜流石の勘付きの速さ! 同じ時代で生きてる奴はちげぇや!」
耳をつんざくほどの爆音と共に、避けられた弾丸とは言え、着弾地点の地面は酷く抉れている。やっぱり化け物だわこれ。あっちもさぞ驚いているだろう。
さて、もしかしたら同類がいたという興奮を感じ取れたのは良いとして。俺は神が与えてくれた機会を存分に楽しもうと思う。戦場を荒らしまくってやらぁ。
対物ライフルの発砲音で鼓膜がやられかけたので、次はきっちりと防音イヤーマフを付け、排莢してから弾を装填して、また構える。
「次はどこに撃とうかなぁ〜とりあえずアイツ邪魔だから消えてもらうか」
スコープを覗くたびにチラつく存在。恐らくこの戦場の指揮官。豪華な鎧が光を反射して非常に狙いづらい。特に風で揺れる軍旗は一番邪魔だ。
俺は一切躊躇うことなく射撃。イヤーマフ越しに聞こえる轟音と共に、指揮官の半身は一撃で吹き飛ぶ。即死だな。
「ん〜これで視界良好、次々〜」
と行きたい所だが、僕が使うこの最強の対物ライフル。弾丸が戦車の砲弾を魔改造されているのは驚いたが、使い勝手の悪さは変わっていないようだ。
排莢方法はボルトアクション式なのに、そのボルトが引き金の後方にあるせいで、装填するためだけに構え直さないといけない。威力は最高だけど……普通のよく使ってた物はないのかね。
毎回の排莢が面倒なので、一度匍匐から胡座の姿勢になって、周りを見渡してみる。そこにはちゃんと用意されていた。俺が目覚めた崖上のすぐ真横に。ケースの中に入っていた。
「なんだあるじゃぁん……やっぱりこれだよねぇ」
「さぁさぁ、混乱してくれよ……アメリカの奴は無視でいいや」
ここからは僕の独壇場だ。いいや、僕の遊び場だ。また匍匐姿勢に入り、スコープを覗き、標準に入った鎧兵士の頭。ではなく、腰や脚を撃つことで妨害を優先する。見つけては撃つ。撃って撃つ。撃つ。撃つ。撃つ。
「はははっ! 何処から撃たれているのかさえも、こいつらは分からねえんだろう? バレる心配はゼロだ! ほらほら、もっと喚けよぉ!」
何故か分からないが、撃っても弾は無くなるが、マガジンは無限にある。弾切れの心配も無いとか。本当に神の業じゃねぇか。
そうして僕は満足行くまで打ち続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます