第3話 決して廻らない、あの日々
見慣れた道を通って、変わらない風景を眺める。
灰色の感情をのけ者にして風を切る。
扉を開いたときには小雨が降っていたものの、いまでは空気に溶けて消えている。
重く空に蓋をする鉛色の雲は、重厚感をまとって時折白く光っている。
しとしととした梅雨特有の湿気が、体の熱と溶け合ってねっとりと不快な重さがある。
きっとそれだけではないのだろう。汗と雨で濡れたシャツが背中にへばり付く。
吐く息の熱気が溶け消えることなく顔の周りにとどまる。
ペダルを踏む足が重い。足につけられた鎖が音を立てて鉄球を引く音が聞こえる。
走り慣れた坂道のゴールが遠く遠く先にあるように感じる。
いや、ゴールなんて存在しないんだろう。
人生のゴールは、僕にはあまりにも罪深い。
いつまでも、トンネルの非常分離帯で燻っているのだから。
下駄箱には木のしっけたにおいが鼻先をくすぐる。
古臭いと思う人もいるのだろうがあまり何も思ったことはない。
ここにそんなことを考える暇はないから。
退屈な空間が過ぎていく。
時計の針は早回しで進むことなんかなく、いつもよりもゆっくり動く。
きっとそうなんだろう。また一つ鐘がなる。
みんなの前で燦燦と話せるあいつも、
嫌気がさすほど何もないクラスメイトも、
あいつらほど目標を以って動けない自分に嫌悪する。
惰性で動き続ける自分は、きっと醜悪なのだろう。
止まったままの時計の針は、あの日に置いてきた。
もう進むことのない、決して
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます