第2話 白昼夢

 深い藍色に染まって、静まり返った星の輝きを見ていた。


 月は隠れ、孤高とばかりにひときわ高くそびえる方角星に目を背ける。


 時計の針はもう止まったままだ。


 少し前にはやった携帯型のゲーム機へと手を伸ばす。


 慣れた手つきで重い体を引きずる。


 布団の上から見る景色を捨てて、画面を開く。


 発売されたすぐ後に今主流となっている機種にとって代われらた骨董品。


 きっと持っている人間のほうが少ないだろう。


 古びた安っぽい光を放つ画面には、文字であらわされた二人の少女がいた。


 誰かの作った不釣り合いな物語に、結局嫌気がさして、タッチパットから手を放す。


 窓辺に体を預けて、椅子に足を置く。


 北側の部屋には月から逃れた星空が身を寄せ合って輝いている。


 補色残像の影がそれを覆い隠しているのだろう。きっと。


 ほうき星が優しく咎めてくる。


 お前は何者だ。と。


 あの日から変わらない景色が、責め立てる。


 なぜ何もしなかった。と。


 答えの見つからない問いは、問いたり得ない。


 昼間に見た影が、脳裏を掠める。


 「■■~!こっち~!」


 宙を舞う光の粒が残光となって河原の石に千々に砕けていく。


 見慣れた風景がこうも恐ろしく付きまとっている。


 決して離れない、その呪いが、胸を締め付ける。


 深く深く白昼夢の中におぼれていく。


 夏の日、日差しの強かった縁側、


 カビっぽいにおいのする和室、


 朝顔のカーテンが光を遮ってひんやりとした空気が広がっている。


 また戻ってきてしまった。

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