『準備』

こんばんは。

今日は来てくれてありがとう。

ごめんね、いきなり呼び出したりして。

仕事、忙しいんでしょ?

わたしの我がままを聞いてくれて、ありがとう。

そんな顔しないで。本当の気持ちだから。


このバーはね、わたしの隠れ家なの。

お店の内装は素敵だし。

マスターはかっこいいし。

お客さんはみんな、紳士淑女って言葉が似あう人達ばかりだしね。

それなのに、料金は本当に安いしね。

奇跡みたいなバーでしょ?

この街で他に敵う場所なんてないと思うな。

いいでしょ? あなたにもここを気に入ってくれたら嬉しいな。

ねぇ、あなたは何を飲む?

お仕事が終わったから、アルコールでも構わないでしょ?

わたし?

わたしはいつも決まってる。

パナシェ。

知らない? パナシェ?

ビールを使ったカクテルだよ。

わたし、カクテルはこれが一番好き。

ねぇ、あなたは何を飲む?


それでね。

なんであなたを呼び出したのかって言うとね。

聞いて欲しい話があるの。

わたしの秘密。

ううん、あなたで良いの。

色々考えたんだけど、あなたで良い。

どう、お酒は進んでる?

お酒を勧めたのはわたしだけど、あんまり酔っ払わないでね。

わたしの話を、聞いて。

そして、返事をしてほしい。


そうね。

ちゃんと伝えておくね。

今から、わたしは秘密をしゃべる。

わたしの大事な大事な秘密をあなたにしゃべる。

あなたに後で、そんなの聞きたくなかったって。

そんな事を言われたら、わたしだって悲しいもんね。

だから、ちゃんと伝えたおくね。

今から話す秘密を聞いたら、あなたにひとつだけ質問をする。

それには、ちゃんと答えて欲しい。

もし、それに答えを出せない事が不安だったら。

もし、そんな事を言われてしまっても困ると思うなら。

今、それを教えてね。

そしたらわたしは秘密を話さない。

わたしの秘密を聞いて、その後の質問に答える事が出来そうにないなら。

今、それをわたしに教えて。

今日の事は、それで終わり。

お酒を飲んで、美味しい物を食べて。

二人でホテルに行って、気の済むまでセックスして。

シャワーを浴びて、ゆっくり寝ましょう。

もし、わたしの秘密を聞いて、その後の質問に答える事が出来るなら。

それを、今。わたしに教えて。

わたしは、わたしの大事な秘密をあなたに教える。


ねぇ、お酒はすすんでる?

慌てるつもりはないからね。

夜は長いんだもの。


でも、あなたはちゃんと準備しておいて。

わたしの質問に答えを出せるかどうか。


わたしの言葉の意味は、伝わってる?

わたしの言ってる事は、難しい?


不安ならそう言って。

そうじゃないなら、そう言って。


わたしは準備はできてる。

あなたはどう?


準備できてる?


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