第16話 後水汚さず?
さて、目の前に転がっているゴブリンをどうするか。このままにしておくと、別のゴブリンを呼び寄せる可能性があるし、その内死臭がひどくなるのだ。
なので、土に埋めるなり、火で燃やすなり、面倒くさい処理をしないといけないのだが。俺には超能力がある。
「よっこいせ、っと」
小遣い程度にしかならないが、ギルドに提出する討伐部位の右耳と、胸から魔結晶を引き千切る。超能力を使うと手を使わないので汚れなくて済むのがいいな。
魔結晶とは、魔物が空気中のマナを取り込む際に体内で生成される結晶のことだ。息をしているだけでも生成されるので、魔法が使えるうんぬんは関係は無いらしい。
手足と首がねじ曲がり、胸が弾けた片方の耳が無いゴブリンが3匹分でき上がった。結構猟奇的な絵面である。
「どっこいしょ」
意味の無い言葉と共に、ゴブリン共に力を込めた。亡骸が光って浮き上がると、一塊の玉となった。
あの悪夢で見た玉と同じだ。あれと比べると大きいが赤黒い玉は同じである。
「足らぬ足らぬは修行が足らぬ、ってか?」
初めて超能力を使ったあの日から、毎日使用して鍛えていた。魔王の記憶から、使えば使う程強力になる事は知っていたのだ。
決して楽では無かった。鼻血は勿論、目や耳からも出血した事もある。下手をしたら脳の血管も切れたかも知れない。
だが、その度に
しかし、まだあれには及ばない。今はまだ、生きているモノに、それも複数同時には使用出来ないのだ。ゴブリンの様な小物だとへし曲げる事が出来たが、オークやオーガの様な大型の魔物だと精々足止め程度だろう。
「ウン?」
いつの間にか足元に来ていたワンコが、何か言いたそうにコチラをみている。なにか褒めて欲しそうに尻尾がブンブン。カワイイですね~。
「掘っておいたぞ」
ゴブリン玉の横に穴が掘られていた。いつ掘ったのだろうか。
「おお!ありがとう」
玉を転がし穴に埋める。こんもりしているが、まあ、いいだろう。血溜まりは土を適当に掛けて。うーん臭い。
お礼に取っておいたガルプの実を投げる。空中でパクリと食べる姿は、まんま大きな犬なのだが。
「さて、帰るか」
お昼前だがお土産に鹿も手に入れたので、さっさと引き上げよう。有料だが、鹿の処理はギルドでして貰えるので大丈夫だろう。皮とか角はいらないし、買い取って貰えれば元手は掛からない筈だ。
鹿と自分を超能力で浮かせ、ワンコの背に乗る。ついでに、ここまで来た時よりもゆっくり帰るようにして、ガルプや野草を回収する。
「お前もいい加減名前を付けないとな」
犬の背でポツリと一言。2週間もの間、毎日会っていたのに名前を決めてなったのを思い出した。
「ん?言ってなかったか?」
足を止め、頭だけコチラを向くワンコ。
「私の名前はガルプ。『賢狼ガルプ』の生まれ変わりさ。『笑う魔王』よ。お前と同じだ」
思わず荷物を取り落としてしまったのは仕方無いと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます