第14話 わんこと一緒
喋る犬との突然の出会いから半月が過ぎた。アレから毎日森に出かけ、その度にこのデカい犬と会うのだが、今のところ襲われる様な事は無かった。
しかし、会う度にガルプの実を要求されるので、森の浅い場所で成っていた実は殆ど無くなり、魔物が出始める中域以降にしか見つからなくなってしまった。
教会の皆。済まない。安全圏で取れる位置にあった甘味は無くなってしまったのだ。
旅に出る為の準備は順調である。冒険者ギルドには登録を済ませた。と言っても、成人していないので『見習い』扱いではあるが。
冒険者ギルドとは、いわゆる『何でも屋』といっていいだろう。魔物や盗賊の討伐。隣街までの護衛。植物や鉱石の採取。街の清掃など、あらゆる仕事を受け持つ斡旋会社の様なものだ。
その組織の『見習い』の仕事とは、お賃金は低いが簡単な仕事。お駄賃は少ないが薬草の納品。荷物運び。等、ランクの低い仕事が回され。使い勝手のいい労働力として使われている。
もちろん、メリットも多い。街の人に名前と顔を覚えて貰えるし、ギルド主催でベテラン勢の講習が無料で受けれる。ギルド併設の飲食店での割引もあるので食いっぱぐれる事はまず無い。その他にも、泊まれる場所の割引や武具のメンテなんかも割引である。至れり尽くせりだ。
しかし、俺はこの街を出ないといけないので、顔を売る必要も無く。この『超能力』で剣を振るう事も無い。よって、冒険者の初期講習のみしか受けていないのである。
別に『見習い』だからといって、受けれる仕事に制限があるわけでは無いが。ギルド側にやんわりと止められる。
それはそうだ。魔物と戦える実力もなければ、持って帰る薬草の知識も無い。護衛任務をするには信頼も無ければ戦力外である。
なので、『見習い』達は、ベテランの話をよく聞き。剣を習い。弓を引いて。採取する物の知識を習うのだ。1年もすれば立派な冒険者の出来上がる。
それまでは、危険な森に入るとしても。安全である浅場に生息しているウサギや鳥などの小動物を狩り。群生している薬草を取りに行くだけだ。
間違っても深くまで立ち入らないのである。
そんな俺が、魔物が出始める森の中域に居るかと言うと。もちろんガルプの実の為である。
「グットボーイ。グットボーイ」
頭を撫でながら声をかける。しっぽがブンブンでカワイイなオイ。
「これか?これが欲しいのか?」
「ガルプ!ガルプ!」
撫で回しながら、上で成っているガルプの実を超能力でむしり取り、目の前で揺らす。
「ほれ。取ってこい!」
ぽーい。と森の奥に投げると、飛んでいく様に追いかけるわんこ。速い。超能力で木々の間を縫う様に飛んで行ったガルプの実が、あっという間に追いつかれた。
「おー。ヨシヨシヨシ」
わざわざ持って来て目の前で食べ始めるわんこ。あんなに渋い実を美味しそうに食べる姿は、とてもカワイイのだが。
「今日も食欲旺盛だな。お前は」
2個、3個とどんどん食べるのは、体の大きさにあってはいると思う。が、その数が10個以上となると食べ過ぎだろう。
「この辺のガルプも無くなりそうだなぁ」
すまん、教会の皆。中域の甘味も無くなりそうだ。
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