第5話 魔王の石
神父が頭を抱えて、多分5分くらいが過ぎた。…
ウンウン言いながら悩み続ける神父。大人しく待っているしかできない俺。
悩み過ぎると十円ハゲになるぞ神父。…十円ってなんだ?
先ほどからノイズが激しい。知らない単語がどんどん浮かぶ。見覚えのない記憶が重なる様に、気持ちが悪い。
そんな感じでソワソワしていると、遂に頭を上げる神父様。
あっ、髪の毛が何本か落ちた様な…もう歳なんだからさ。
「うむ。ん?その顔はどうしました?」
「いえ大丈夫です?」
変な事を考えてた事がバレない様にドギマギする。いぶがしげな目を向けながらも話を進める。
「おそらくソレは呪いの石です」
「呪いの石…」
オウムの様に繰り返すしかない俺。…オウム?鳥?
カラフルな鳥の姿が脳裏をよぎる。
「ところで、どんな夢を見るのかな?」
「え?急に、どうしました?それより『呪いの石』とはなんです?」
話が急に変わり驚く俺。しかし、神父の目は真剣だ。
「いいから。どんな悪夢を見ているのかな」
有無を言わさない迫力。気迫に押されて話し出す。
「えっと。魔王に滅ぼされた帝国の夢です」
「なるほど…続けて」
神父に促され続きを話す。皇子が王国に戦争をふっかけ、魔王の逆鱗に触れた事。
帝国軍の蹂躙と敗走、皇帝の御前で行われた虐殺。
とある魔法使いの最後と光に包まれ消えた帝都。
夢で見た事を掻い摘んで話す。
「ふむ。で、あるならば。該当する話から推測するに、この石は『笑う魔王の呪石』です」
「『笑う魔王』…」
「そう。今から何百年も前の魔王。いつも笑っていた。笑顔と笑いを絶やさない魔王。死と破壊の王」
「二つ名の割にもう一つが物騒なのですが」
「そうだよ。かの魔王は、笑いながら街や国を破壊して回ったからね。だから『笑う魔王』」
名前が強すぎる…強くない?
「あの魔王の以後。数多に魔王は出現しましたが」
そんなにいっぱいいたのか。魔王が。
「兵隊の死に方。謁見の間の話。そして帝都の最後。これらが該当するのは『笑う魔王』しかいない」
『笑う魔王』
夢で見ていた彼は確かにずっと笑顔だった。無理矢理貼り付けた様な笑顔だった気もするが、今じゃ分からない。
それよりも、『呪いの石』と悪夢の関係を聞かなくては。そう思い神父に口を開こうとした。
「うん。その『呪いの石』は記憶だよ。魔王のね」
その前に神父の口が開く。呪いと魔王の話を。
「記憶…」
「そう、記憶。魔王の力と記憶が染み込んだのがその石だ」
それなら何故『呪い』と言われているのか。ただ、悪夢を見せ、捨てる事の出来ないだけの石なのに。
「君は『巡礼』に行かなければいけない」
「巡礼…ですか」
話について行けない。神父の話は唐突過ぎる。頭が痛くなる。
「魔王の記憶をたどる巡礼だ」
「どうして?」
何故俺が?
「そうしなければ呪いが解けないからね」
「何処に?」
何処まで?
「帝都があった場所に。魔王の始まりの地に」
あの夢で見た、あの場所へ。
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