第29話── 「秘密通路の奥で見たもの」

壁のパネルを抜けた先は、薄暗い通路が続く狭い空間だった。湿った空気に混じるかすかなカビの匂いが、長い年月の静けさを物語る。

ユリとリクは慎重に足音を響かせながら進んだ。


通路の奥で、古びた書類や埃をかぶった家具が山積みになっていた。壁には、10年前の新聞の切り抜きや手書きのメモが無造作に貼られている。


リクがその一枚を見て、眉をひそめた。

「これ…消えた元教師タカシの名前が何度も出ている。どうやら彼は、街の“事件”に巻き込まれていたようだ。」


ユリは手に取った新聞を読みながら、声を震わせた。

「“不可解な失踪事件”……それに、この街の“嘘”に関する言及がある。まるで誰かが真実を隠そうとしているみたい。」


部屋の隅に置かれた木箱をリクが開けると、古い録音テープが見つかった。

「これ、誰かの音声記録みたいだ。」


二人は再生機を探し、埃を払ってスイッチを入れた。機械がうなる音とともに、かすれた声が部屋に響いた。


「……あの日の夜、何かが起こった……誰も知らないはずの真実……この声が消える前に、君たちに伝えたい……」


ユリは顔を上げ、決意を込めて言った。

「この録音の声、まさか……元教師タカシの声?」


リクは力強く頷いた。

「この先に、まだ語られていない秘密が眠っている。俺たちはその全てを掘り起こさなければならない。」


外の風が通路の隙間から冷たく吹き込み、二人の心に緊張感を増した。

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