第22話 気づけば北野のことを考えてる


 気がつけば、俺は彼女のことばかり考えている。


※※※


 バサッ。傘を広げた。

 よく雨が降るなぁ。これが梅雨なんだよな。


 放課後の昇降口。今から帰るのは部活か特別更生プログラムを受けているものだけだろう。 今日は夏至ということもあり外は暗くなかった。 

 ポチャン、ポチャン。校舎一階の壊れた雨どいから雨がしたたり落ちている。

 俺はそれを確認してから歩きだした。


「待って!」


後ろから声がかかった。北野だ。


「入れて。傘忘れたの」


振り返った俺。走ってきた北野が傘の中に入る。


「ああ、うん。大丈夫?」


 俺は恥ずかしい気持ちを隠して彼女の方を向いた。彼女は少し濡れた髪をハンカチで拭っていた。


「うん、ありがとう」


お礼を言う彼女の表情に俺はドキリとした。北野の笑顔が見たのだ。


「うん、何?」


北野は俺が彼女をじっと見ているのを不思議に思ったようだった。


「いや・・・可愛いなと思って」


これに北野が目を大きくさせた。驚きでいっぱいといった具合に。


「・・・・・・」


「・・・・・・」


うん、恥ずかしい、俺。北野は何も答えてくれない。


「ごめん、いきなりで」


俺が謝る。すると。


「なんか、最近の青山君は大胆ね」


「う、うん。ごめん」


「別に、謝らなくてもいい」


「うん」


道は坂道を下っていた。道は車が走るところとその脇の歩道に分かれていた。

 北野のうちは高校の近くにあるらしくて駅は利用しなかった。いつもだったら途中の分かれ道でさよならになる。でも今日はそうなると彼女は濡れて帰ることになる。


「ごめん。傘、予備がない」


分かれ道に来た時、俺は彼女に言った。


「・・・・・・」


彼女が黙っている。俺が言うのを待っているかのようだった。

 これは家まで付いてったほうがいいのか? 俺は迷ったがこうした。


「家まで送るよ」


そして返事があった。


「うん」


そして、北野と一緒に彼女の家まで歩いた。

 頰が火照っているような。なんか熱い。胸までドキドキしてきた。


 車道の狭い道を歩いた。通行人の一人とすれ違った。すると、北野が俺に寄った。


 !

 隣を見ると、北野が俺の肩に触れていた。

 まずい。まともに彼女の顔を見れない。


 そうして俺と北野は家に着くまで離れることはなかった。

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