第21話 須藤先輩に打ち明ける
先輩は、何て答えてくれるんだろう?
※※※
「よ、お疲れ」
須藤先輩だ。
放課後の風紀委員室。俺は北野が来るのを待っていた。そこへ須藤先輩が顔を出したと言うわけだ。
北野と電話をしてあれから一週間がたっていた。試験は無事に終わり、俺は赤点を阻止することが出来た。更生プログラムの方も再開されて、落とし物を届けるミッションも北野に付き添われてだが、成功していた。春とはたまに食堂で会って声をかけ合う仲になっている。
「どうも」
俺は少し寂しかった。 北野には信頼されていないと感じているからだ。
「なんだ、元気が無いな」
先輩が心配そうに俺を見た。
「いえ、そんなことは無いですよ。いつも通りです」
内心は誰かに打ち明けたかったけど、上手く言えない気がする。どうしよう? 言おうかな?
「そうか? 心配だったら言った方が良いぞ。後悔してからじゃ遅いからな」
う、そうだよな。でも笑われないかな?
「先輩は、好きな人はいますか」
「え?」
先輩は驚いたようだった。
「……前に、俺は最低なことをして……それでここにいる。
でも、もう二度とあんなことはしないって、そう思って生きてるんです。」
俺は桜井春と北野咲が心配だった。この二人に救われた俺が、今度は救う側になっても良いのではないかと思っていた。
俺は先輩に北野と電話した時のことを話した。すると先輩は言った。
「俺も北野の言うことには賛成する」
やっぱり。
「自分の想いを通すことはちょっと身勝手だから良くない。でもさ」
先輩は続けて言った。
「北野も理解していると思う。あいつ、普段は顔にも感情にも出さないから分かりに
くいけど、時々笑顔になるだろ? それで声も明るくなるから、きっと嬉しいんだよな。電話の時もそうじゃなかったか?」
感慨深げなように先輩は言った。
そうか。俺は勘違いをしていたようだ。俺は否定されていない。ひとりぼっちでもない。
「そうですね」
俺は納得がいったように頷いた。
「へへ、それはそうと具体的に北野のどんなとこが好きなんだ? たぶん俺が見るに・・・」
ガラッ。扉が開いた。 俺と須藤先輩が振り向いた。そして視線の先に北野がいた。
「青山君、行くわよ」
彼女はいつものように、いや、いつも以上に厳しい顔をして俺を見た。
「はい、今行きます」
それに俺は怖々としてプログラムの準備をした。
北野は頼れる女の子で強いけれど、弱音を見せたことが無い。
彼女の本当の姿は、これで合っているのだろうか?
俺は、そんな疑念を感じた。
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