第20話 俺は変わりたい
俺に出来ることは、なんだろう?
※※※
俺はスマホを手に取った。
「北野さん?」
電話越しの彼女に声をかける。
「お疲れ青山君。大丈夫? 疲れてない?」
そう言う北野の声があった。彼女はなんだかどっと疲れているような声だった。
「いや、大丈夫だよ」
俺は答えた。
「桜井さん、どうだったの?」
余計な前置きはいらない。すぐにでも知りたかった。
「そうね。大丈夫といえばそう。」
なんだかはっきりしない返答だった。
「何かあったんだね」
俺は少し声の大きさを抑えて言った。焦りが声に出るからだ。
「はっきりとは言えない。これは風紀委員としての秘守義務よ」
彼女はきっぱりと言った。それでも俺は彼女の力になりたい気持ちがあった。だから言った。
「俺にできることはないの?」
俺は真剣だった。今まで北野に付き添ってもらって助けられてばかりだからだ。
「そうね、春と仲良くしてほしいわ」
彼女はそう言って息を吐いたようだった。
「うん。でも北野さん、それでいいの?」
そういう俺に彼女は黙った。
「・・・・・・」
しばらくなにも答えてくれなかった。
「北野さん。俺、変わりたいんだ。だから力になりたい」
俺は声に力が入っているようだった。彼女の返事を待つ。そして。
「あなたは変わったわ。短い間に」
北野が落ち着いたような声で言っていた。
「でも、これはあなたが関わる問題じゃないわ。それを分かって欲しい」
俺は落胆した。まだ信用されていない。がっかりだった。
「プログラムのミッションもまだ残っているし、あなたはそれをこなしていくことを考えて」
これに俺は反論した。
「北野さん。俺は更生することが必要なんでしょう。だったら北野さんを助けることは更生にならないの?」
そう俺は強く言った。
「・・・・・・」
北野は黙った。しばらくして答えた。
「気持ちはすごく嬉しいわ。でも相手のことも考えて。自分の気持ちに正直に動くことだけが人助けじゃないわ」
「・・・・・・」
今度は俺が黙る番になった。なにも言い返せなかった。
「たぶん、問題は向こうから来るはずよ」
北野は意味深な事を言った。
「それまでは、大人しくプログラムをこなすこと。いい? 破ったらレッドカードになるわよ」
彼女はそうクギを刺してきた。
そこまでされると、なにも言えなくなる俺だった。
「分かった。言う通りにするよ」
俺は渋々答えた。これが俺の出来ることなんだ。
「何か他に不安なことがあったら言ってね。出来るだけのことはするから」
北野はそう言った。
でも、俺の不安は残っていた。
こんな時、須藤先輩だったら何て言うだろう?
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