この命ある限り守り抜く
「ふう……」
雪が舞い散る中、不気味なほど光る満月の下で私は狐の耳を生やして目の前の人間を見ておりました。
人間は、恐れるような見惚れるような瞳で私を見ていました。
私は、巫女の格好をしたまま毎日お手入れしている耳と尾を生やして、その人間に近づきました。
「怖がらないでください、あなたの悪霊を祓うだけです」
私はお札を悪霊にとりつけて唱えました。
私にしか聞こえない悪霊の叫び声は、いつまでたっても聞きなれませんがそれも数秒で終わります。
悪霊は塵となって空へと舞いました。
「お祓い完了いたしました」
私は、人間の目の前でヒュンッ、と風を立ててその場から離れ空を舞いました。
今日もどこかで、人が悲しんでいる。
飼い猫の死をただ見守るものもいれば、仕事で疲れ果てて精神を病む人もいる。
そのどれも、悪霊がついていなければ救えないのが私の至らない所です。
「お許しください」
私はすべての人に謝りながら、今日もこの街の平和を見守るのです。
私の命ある限り、悲しみが少しでも減りますように……。
宮月町、いかがでしたか?
田舎もどきのえとせとら ミヤツキ @sakana1018
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます