札束で殴り合うスポーツ
八二六 しり
札束で殴り合うスポーツ
「お前さ、そんな顔でやる気あんの?」
真冬のトイレにて、一人の女子生徒に水がかけられる。
「お前の親なんだっけ、メーカー勤め? 知らないけどさ、顔ぐらい整える金もねえわけ?」
「ご、ごめん美咲ちゃん……私の親が貧乏なばっかりに」
美咲は思いっきり個室のドアを蹴り飛ばした。
「ごめんじゃねえんだよ! ウチは鼻プロもやったしボラックスだって3本は打ちこんでる!! エラも頬も削ってもう削るところなんかねえんだよ!! ……何が私の親が貧乏だからだよ……! お前だってウチみたいに腎臓くらい売れよ!!」
「で、でもそんな……やるの合コンでしょう? そんなに気合い入れなくたって……」
女子生徒は美咲に蹴り飛ばされた。
「てめえ! イケメンに汗だくで抱かれることを知らねえからそんなことが言えるんだ! ウチはハイスペダーリン見つけて薔薇色人生を歩みてえんだよ!」
「み、美咲ちゃん、顔は蹴らないで……顔変わっちゃう……」
女子生徒は何かを思いついたかのように天井を見上げた。
「顔変わっちゃう……美咲ちゃんみたいに……ふふ」
「麗奈てめえ!!!!」
美咲は麗奈の襟を思い切り掴みかかる。
ゼロ距離で睨んでくる美咲の顔を見ても、麗奈は眉ひとつ動かさなかった。
「でもね、私はお金をかけてないわけじゃないの。私がお金を使ってるのは身体。男の人なんてどうせここしか見てないの。豊満な胸、白いふともも。そればっかり」
「……じゃあなんだよ、ウチは顔に金かけてバカだっていうのか?」
麗奈は美咲の頬に優しく手を触れる。
「そうは思わないよ。ルッキズムな今は整形をするのが正しいことだし、私は顔よりも身体に金をかけたってだけ。美咲ちゃんが狙ってる亮太くん……だっけ?」
「亮太がなんだよ?」
麗奈の口がぐにゃりと歪む。
「私の胸に吸い付くのが好きなんだって」
思いっきり壁に麗奈を打ち付ける。
衝撃でタイルが割れ、麗奈の額から血が流れる。
「あは、あはは! お互いに金かけてやることがトイレでレスリングなんだね、バカみたい!」
「お前なんか殺してやる! 腎臓抜き取って売り捌いてやる!」
「私の腎臓で次はどこを整形するの? 目? 鼻? それとも性格? あははは!!」
真冬のトイレで女子生徒二人は陽が落ちるまで楽しくレスリングをしたそうな。
友情なし、勝者なし。
札束で殴り合うスポーツ 八二六 しり @hzm_4ri
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
夕雲外食記/夕雲
★27 エッセイ・ノンフィクション 完結済 28話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます