第24話 感動の再会

「あ、見えてきた! ケイタさん、あれ。あそこに見えるのがミゼルのカディア教会ですよ!」



ニッコニコのリッカが言う通り、俺たちの立つ断崖絶壁の眼下には、森の中に鎮座するようにドーム状の神殿が佇んでいる。



「それはそうとなんでこんな崖の上に来たんだ?」


俺の素朴な疑問に、リッカは「えへへ......」とはにかんだだけで答えない。



......道、間違えやがったな。



「私、元々捨て子だったんです」


明らかに一度来た道を引き返しながらリッカはさらりと言った。



「生まれてすぐに教会の前に捨てられてたらしくて、そんな私を、女教皇ハイプリエステスのウィラー様が育ててくれたの。だから、あの教会が私の家なんです」



そんな事を教えてくれるくらい、この道中で俺たちの仲は深まっていた。



「そこでもう一度修行し直すのか?」



「はい。ケイタさん、少しだけ待ってて貰えますか?」



リッカは決意に満ちた表情を見せた。



「ああ」



器の大きいところを見せようと頷く俺だが、そもそも俺には否も応もないのだった。



門前町の中央を貫く参道を歩き、装飾の施された重厚な鉄の扉をくぐると、中はロウソクの炎が揺れる広く薄暗いが厳かな雰囲気の空間だった。



「カディア教会にようこそ、旅のお方......」



俺たちの姿に気づいた修道女が、そう言ってすぐに表情を変えた。



「リッカ様!?」



その声に気づいた、近くにいた別の修道女たちが次々にバタバタと集まってきた。みんなリッカとよく似た白いローブ姿をしている。



「リッカ様!」



「リッカ様がお戻りよ!」



そう言って周囲を取り囲まれたリッカは、照れ臭そうに笑いながら言った。


「ただいま」


その一言で、老若様々な修道女たちが「ワッ!」と沸いた。

こういうところ、女って身分や立場じゃ変わらないもんだな。......いや、知らんけど。



やがてそれぞれと一通りの言葉を交わしたリッカと俺は、「ユイリ」と呼ばれていた20代中頃くらいの修道女に連れられて、リッカの育ての親にして教皇たるウィラーの執務室へとやってきた。



「ウィラー様、失礼いたします......リッカ様が......お戻りです!」



執務室のドアを開けながら、嬉しさの感情が抑えきれなくなったのか、ユイリの声が最後は異常にうわずった。



本棚に囲まれたその部屋の中では、30年配の女性が大きなテーブルに着いて書き物をしていたようだったが、ふとこちらに目をやるとゆっくりと立ち上がって言った。



「おかえりなさい、リッカ」



その表情はまるで、聖母マリアのような慈愛に満ち満ちている。



「ただいま、戻りました」



そう言ってリッカはゆっくりとウィラーと思しき女性の元へ歩み寄って行く。



リッカがウィラーの広げた両腕の中に包まれたとき、ふと隣を見ると感極まったユイリが「あああ......」と声にならない嗚咽を漏らしながら大号泣していた。



......いや、泣きすぎでしょ。

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