第14話 作戦会議

翌朝。



俺たちは豪華な朝食後の食堂で、コーヒーや紅茶などを嗜みながら、これからの計画を話し合っていた。



「ねえ、みんな知ってる? ベメルグ帝国がティンガーラッド王国への進攻を開始したみたい」



神妙な面持ちでレブランが口を開いた。



レブランが言うには、このレイズベリー王国の北西にある二国間で戦争が始まったらしい。



「そんな......魔王復活が近いというのに、ヒト同士で争うなんて......」



テオが絶句している。



「これだから人間は......ホント、呆れてものも言えないわ」



ミリィは心底うんざりした様子だ。



「ねえ、ベメルグに行かない? 私たちなら止められるかも!」



「そうね。行ってみましょう」

「はーあ、それしかないか」



テオの提案に、レブラン(とミリィ)が賛同する。



あーあ、この幸福な時間ももうおしまいか。名残惜しいのぅ。



そんなことを思いつつ、ふと向かいに座っているリッカを見ると、苦しそうな表情で俯いている。



「どうしたんだ、リッカ。下痢か?」



チーズケーキの最後の一切れを口に放り込みながら、心配そうな気配を感じさせなくもない俺の言葉が最後まで終わらぬうちに、リッカが口を開いた。



「私、一度ミゼルの総本山に戻りたい」



「「「えっ!?」」」



テオ、レブラン、ミリィの3人が全く同じ反応をした。



えーと、『ミゼルの総本山』とは......?



そんな俺の疑問をよそに、会話は続く。



「どうしたの、急に」



レブランが尋ねる。



「多分、このままじゃ魔王は倒せない。それどころか四獣将にも......」



リッカは言葉を選ぶように、思いの内を語り始めた。



「......うん」



テオは反論しない。



「私、もっと強くならなきゃ。多分私が一番みんなの足を引っ張ってる」



いや、一番は俺だろ。



その言葉を俺は飲み込んだ。何故なら俺は、そもそも戦力外だろうからな。



「もう、決めたことなの?」



ミリィが尋ねる。



「......うん」



「そ。じゃあもう気持ちは変わらないわね」



「ごめんね」



リッカは心底申し訳なさそうに答えた。



「謝らなくていいよ、リッカ。その代わり絶対今より強くなって帰ってきてね」



テオの言葉を聞いて、リッカは初めて笑顔を見せた。



「うん!」



明るい声で返事したリッカは、チラチラと俺とミリィの顔に交互に視線を送りながら言った。



「ねえ、ミリィ......」



「ん?」



「ケイタさんと一緒に行ってもいい?」



え!? なんで俺!?



「え!? なんでケイタと!?」



ミリィは俺と全く同じ感想だったらしい。



「んー、なんとなく。一人じゃ寂しいし。ダメかな」



「全然大丈夫よ」



ミリィは一切俺の事を見ずに言い切った。そう言えば、今朝から一度もミリィと視線が重ならない。やはり若干なりとも、昨晩のわだかまりがあるらしい。



「やった! ケイタさんよろしくお願いしますね」



そんなことなど知る由もないリッカは、屈託のない笑顔を俺に向けた。



(『強くなれ』か......)



後でマテウス氏に言って、剣の1本でも貰ってこよう。

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