行く年と来る年の境目

発車オーライ

 今日は大晦日。明日はお正月です。


 新しい日捲ひめくりカレンダーを宿舎の壁に掛けながら、駅員さんはマレとムンに言いました。 

「駅と駅が線路でつながっているように、今日と明日は続いている。日捲りみたいに、今日をやぶって、明日にしていくわけじゃない。破った昨日をゴミ箱に捨てるわけじゃないんだ。してや、新しい年と古い年は、こうしてカレンダーを掛け替えるようなものではないよ。マレだって知っているだろ。ムンはまだ小さいから、わからないだろうけれど」

 でも、犬のマレと猫のムンは駅員さんのいうことなど聞いてはおらず、ストーブの前でくっついて眠っていました。まるで同じ夢を見ているように、ムンとマレの足先が動いています。夢の中で鬼ごっこでもしているのでしょうか。 

 


 掛け時計が12時になりました。

 日付が変わります。

 今日が昨日になり今年が去年になって、明日が今日に変わって来年が今年に変わりました。



 駅員さんはムンとマレを起こさないように、そっと外に出ました。桑の木の枝の間に、幾多の星がまたたいています。

 指差し確認をして、駅員さんは澄み渡った夜空に向かって言いました。

「新しい年、発車オーライ!」



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