【第8話 調査隊との邂逅、そして第一の試練】

朝靄のなか、ギルドの前に集合したゴブたちの前に、調査隊が現れた。


隊長格と思しき男は、無骨な鎧をまとった中年剣士。隻眼の彼は一瞥しただけで、三人に言った。


「……この程度が補助か。ギルドも人手が足りんらしいな」


その言葉にゴブがたじろぐと、ミレイが前に出ようとする。


だが、別の若い隊員――赤毛でやや挑発的な口調の男が笑った。


「まあまあ、隊長。戦闘力ゼロでも、地元案内って話っスよ。せいぜい荷物運びくらいには使えるんじゃないッスか?」


シンが肩をすくめた。


「言いたいやつには言わせとけ。やることやって見せりゃいいだけだ」


隊長は言葉少なに背を向けた。


「無駄口叩く暇があれば、出発の準備を急げ」


一行は森を進み、目的地付近で野営地を設営。三人には補給支援と周辺警戒が割り振られた。


ゴブは小動物の通り道を見つけ、罠を仕掛けて食料調達。


シンは壊れた荷車の車輪を木の根と麻紐で補修し、移動手段を確保。


ミレイは薬草を使って、擦り傷の多い隊員に湿布を施した。


「お、お前がこれ作ったのか? なんだか気持ちいいな……ありがとな」


隊員の照れたような言葉に、ミレイは少し頬を赤らめてうなずいた。


赤毛の隊員が唸るように言った。


「……地味だけど、ちゃんと役に立ってんな」


その夜。


野営地に静寂が訪れたころ、焚き火の灯りの外から微かな音が聞こえた。


ゴブが素早く身を起こす。


「……何か来るのだ」


夜目の利くゴブには、木陰を這う魔物の影が見えていた。


「小型の……リンク種か。偵察かもしれないのだ」


即座に起こされた隊は武器を構え、魔物は撃退された。


一体が野営地の端に肉薄し、見張りの隊員が腕にかすり傷を負ったが、大事には至らなかった。


隊長がゴブを見た。


「お前の警戒がなければ、被害が拡大していたかもしれん……礼を言う」


言葉こそ少ないが、その声には確かな変化があった。


ミレイとシンが顔を見合わせ、微笑む。


その夜、ゴブは焚き火の前で空を見上げていた。


「爺も、こんな夜を何度も越えてきたのかな……」


ふと、風が変わった。


「……何か、焦げた匂いがするのだ」


そこへ、隊の一人が戻ってきて言った。


「……東の斜面に、妙な焼け跡を見つけた。草も土も、焦げたように剥がれてる」


ゴブは立ち上がった。


「それ、案内するのだ。多分、爺が言ってた場所に、近いのだ」

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