第3話 大西 桜花

「あ〜行っちゃった。」

私はそうポツリと呟いた後に床に落ちていた1冊の本を握りしめた。

"貴方は何も変わらない"

きっと彼はこの本を触った途端に別世界に行ったとでも思ってるんでしょうね笑

ただ過去の記憶を蘇らせただけなのに。

『お前のせいだろ?』

雨がまだ土砂降りの中その声だけが脳内に響いた。

私の生まれ育った場所、あの小さな街では噂や他人の不幸なんて皆の餌になるだけだった。

小中高とエスカレーター式の学校では

皆が幼なじみだ。生きていればスクールカーストが出来上がる。

上手く馴染めなかった私はきっと社会でも

不適合者扱いなんだろう。と思いながら

保健室登校をしていた。


「桜花〜!宿題のプリント持ってきたよ〜」


唯一話しかけてくれていたのは同じクラスの

未来だけだった。

「あ、ありがとう…。いつもごめんね…?」

こんな寒い冬の時期にわざわざ届けてくれるのが申し訳なかった。

「なに言ってんのー?同じクラスだし私がそうしたいからしてるの!だから桜花は気にしなくていいの!」

未来の言葉に胸が熱くなった。

でも未来は休み時間の度に私の所へ足を運んでくれる、それを未来の友達は良く思っていなかった。

「ねぇ、なんでアイツの所に行くの?アイツがしてきたこと忘れたの?」

トイレから出ようと思っていたところ、未来たちが話してる声が聞こえた。

「何回も言ってるでしょ?桜花は幸都君と付き合ってないし、恋愛感情も持ってないって!」

女子たちの揉めた声が聞こえてくる、私は何も知らなかった、ただそれだけだったのにイジメの対象になってしまった。

「あっそ、未来もそっち側ってことね?今日から1人で行動でもしてな。」

チャイムと同時にこの会話は終わった。

私はトイレの中で立ち尽くしていた、1人で行動するだけなら"まだいい"、でもそれだけで済むはずがない、私がその被害者だ。

扉をそっと開けると、未来が肩を震わせて泣いていた。

「み、未来…、もう保健室まで来なくていいよ、愛たちに謝って私の悪口を言って?そしたらイジメられずに済むよ、」

それしか言葉が見つからなかった。

未来は顔を上げて眉をひそめている。

「本当に言ってんの…?ねぇ桜花、少しでも私のことを思ってくれてるなら教室に戻ってきてよ、私は桜花の悪口を言いたくない、2人で過ごそう?」

(今まで助けて貰ったから今度は私が助ける番だよね?)

教室に戻ったらイジメのリーダ"愛"に目をつけられてまた虐められるだろう、制服、ノート、机の落書き、数え切れない屈辱を味わってきた、未来が転校してきてから少しだけ教室の雰囲気が良くなってきたのに、佐々木と私との誤解のせいで愛の期限を損ねてしまった。

でも未来がそばに居てくれるなら心強い

「良いよ、私教室に戻るよ」

未来の顔が明るくなった。

この決断が間違いだった、教室に戻らなければ私は電車に轢かれることも無かったのに。


「私たちこれからもずっと一緒にいようね」


そう言って握りしめてくる未来の手が冷たかった。





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