第1話 佐々木 幸都

『ただいま電波の届かない所にいるか_ 。』

そうアナウンスされる声に俺はどうする事も出来なかった。

ただ確実なのは、『大西 桜花』の名前が

ネットでトレンド入りするくらい有名になる事だけ分かっている。

もちろん殺人犯として。


俺と彼女が再開したのは古い本屋だった。


あれは予期せぬ予期せぬ大雨に当たってしまい、雨宿りする場所を探していると1軒の

本屋に目が止まった。

「ここしかねぇのかよ…」

ただでさえ雨に濡れて気分が下がっていると言うのに、1冊でも買わないと出れなさそうな本屋しかない。

「仕方ない。ここにしよう。」

そう思った瞬間、

チリン。チリン。と鈴の音が鳴った。

驚いて目を開けると1人の女と目が合った。

その女は平然と微笑むだけで

「良かったら中に入って雨宿りでもしていって下さい。」

雨の音を遮るかのように彼女はそう微笑んだ。


「今朝は晴れてたのに災難でしたね。」


そう語る女はレジの奥にある小さな部屋へ通してくれた。

「あ、部外者が入ってもいい所なんですか?」

そう俺が言うと、女は作り笑顔で、

「雨止むといいですね」と、質問に答えてくれなかった。

(気味悪いな…なんか畳も湿ってるし)

警戒しながら棒立ちしていると女が

「どうぞ座ってください、本がお好きでしたらご自由に見ていってください」と言われ、

俺は笑顔で「そうさせてもらいます。」と

言った。

(あの女と2人きりで居るより全然いい…)

そう思って、人生で本なんか読書感想文を書くためにしか触ったことがない俺は適当に歩いていた。

すると、ある1冊の本に目が止まった。

(この本、何処かで見たような?)

不思議な感覚に囚われ触った瞬間____


「この本に興味が?私たち気が合いそうですね?」


さっきまで部屋の奥に居たはずの女が足音も立てずに俺の背後に立っていた。

俺は驚き、本棚にある本を落としてしまった。

俺が驚いたのは女が背後にいたからでは無い。

俺が震えているのは女が手にカッターナイフを握りしめているからだ。

(あの女の目が怖い、このまま居続けたら俺まで可笑しくなりそうだ。)

「あ、驚かせてしまいましたね、実は荷物が届いたんですよ、だから__、」

「もう終電なので行きますね。ありがとうございました。」とお礼を言い、

俺は全力ダッシュで店から飛び出た。

おかしい、おかしい、あの女も可笑しいし

あの本を触った瞬間、見覚えの無い家が目の前に現れた。

一体あれは何だったんだ___。






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