友達とは、一体何なんだろうね

「死体の血、操りやすかったな…」


 おそらくクラウザーは魔族か悪魔だ。それ以外は魔人だったのだろう。


 血液に含まれている魔力が多ければ多いほど操りやすい。

 そもそも、血液自体戦闘に利用しやすいと考えていた。


 血液は少し粘り気があり、魔力で形作ることにより、強固にできる。

 大気中の水を氷にし武器として使うことも考えたこともあった。


 しかし、水蒸気をあつめ、冷やし、形作り、強固にする。

 手順が多すぎるのだ。


 血液なら自分の体内から少し出し、剣の形にすればいいし、生き物を倒し利用することも可能だ。

 そして、この血の剣(ブラッドソード)を愛用している。


 また、血液は燃焼すると一酸化炭素を放出する。つまり、さっきの現場を人間が通れば、一酸化炭素中毒になる可能性がある。


 これによって、この騒動が人間によるものか、魔人などによるものか分かるかもしれない。


 ちなみに僕は、特殊体質で中毒にならないからそこは問題ない。


 さっきの現場は誰かが見ていた。それを特定したい。


 自分のマンションは六階建てでその三階に僕は住んでいる。

 前の星乃のときみたいなミスをしないためにも今回はエレベーターで上がる。


 エレベーターのドアが開くと、暁月ん家の玄関の前には星乃が立っていた。


「はぁ…何か用事?」


面倒くさそうに僕が聞いた。


「荷物がうちと間違えられてて……」


「あーそういうことね」


 荷物を僕に手渡しすると、僕の家の隣の家に入ろうとしていた。僕は自分の目を疑った。

「は?お前そこ住んでんの?」


「うんそうだけど、言ってなかったっけ?ぺぺぺ」


「嘘だろ…」


 最悪だ。隣に星乃が住んでいるのかと思うと鳥肌が立つ。


「あ、あとこれあげる」


 桃が入った袋を渡された。


「なにこれ?」


「どうみても桃でしょ……あ、こういうことされると好きになっちゃうタイプぅぅ?」


「面倒くさいなぁ、なんで僕にくれるんだよ」


「お裾分け、親戚から大量にもらったから」


「あぁ、ありがたく貰うよ」


「うん、じゃあね」


 星乃は笑顔で手を振って自分の家の扉を閉めた。


 もちろん、女からもらったものなど安全かどうか分からない。毒が入っているかも知れない。

 だから、躊躇なく捨てた。



---



 翌日、学校で星乃が話しかけて来た。


「桃どうだった?」


「まだ食べてない」


「えぇなんで食べてないの? 私からのもらいもの勿体なくて食べれなかった?」


「だまれ、果物って少し置いとかないと甘くないんじゃなかったっけ?」


「そ、そうかもしれんけど…」


「桃は二、三日置いて、食べる二、三時間冷やす美味くなるらしいぞ」


 声の方にを向くと和也だった。

 和也は少し声がおかしい。


「和也くん詳しんだね!」


 星乃もわざとらしい。


「和也お前具合悪いんじゃないのか?」


「いや〜なんか朝から頭痛いし、ちょっとめまいがするんよな」


 だから今日は大人しいのか……。


 インフルエンザのような症状があるらしい。これは、一酸化炭素中毒の初期症状に当たる。

 あまり信じたくはないが、和也がクラウザーを動かしていた可能性がある。


 ただ、魔族を動かせる権力を持つのは悪魔だけだ。すなわち、和也は悪魔でないとおかしい。だが、魔人、魔族、悪魔は一酸化炭素ごときで、症状を発するとは考えにくい。矛盾している。


 まぁ殺してみれば簡単なのだがな……。しないけど


「授業始まるぞ〜」


「はいはい」


 そう言って、和也は自分の席に戻る。



 授業中、


「あれ?やばい教科書がない」


僕は教科書を忘れてしまったようだ。右隣は女、左は星乃。

 見せてもらうやつがいない。


「あれれ? 教科書忘れちゃったのぉ?」


星乃が少し煽るような口調で聞いてきた。


「ち、腹立つな。忘れたよ」


少し切れ気味に返事をした。


「あーそーなんだ〜。見せてください萌音さまぁ〜て言ったら見せてあげるけど……どうする??」


「殺すぞ」


「やだ、こわーいん」


 今日の星乃はいつも以上にきもい。


「ではこの三十四ページの二番の答えを……暁月、答えは?」


先生が当ててきた。


「ほら、ここだよ」


星乃が教科書を指指して言ってきた。


「Pn=2/3(-1/5)^n+1/3です」


「は?お前なんで解けるんだよ」


先生が何か言ってるが無視した。


「サンキュー星乃」


「昼、奢ってね?」


 可愛いさアピールしながら言ってきた。


「え、弁当は?」


「忘れた…」


「じゃあ俺のを見せて上げる」


 煽り気味で言った。

 星乃は頬を膨らませ、目を細めてこちらを見ている。


 そして、和也もこちらを見ている。



 休み時間トイレに行くと、和也が話しかけて来た。


「お前さ、ごほ、星乃さんとどんな関係なの?ごほ、ごほ」


「そんなことより、お前死にそうじゃね?」


「そんなこと…だと…俺は…俺は…」


 和也の様子がおかしい。


 空気が揺れ、魔力が上がっていくような感じがする。


 そして、和也が顔を上げこちらを見ると、赤い目をしていた。

 さすがにまずいと思い、トイレから飛び出した。その後を追って壁を破壊してきた。

 本気で廊下を走り回る。教室や廊下にいた人達はパニックを起こしている。


 走っていると、教室には星乃がいた。


「早く逃げろ!」


「え?なに?」


 スマホを見ていた星乃が急に慌てだす。


「化け物がくるぞ!」


「暁月くんがクリムゾンになれば解決じゃーん」


「無理言うな、学校だぞ?」


 星乃が何か言いながら僕の頭の上に目線をあげ、顔が真っ青になっていた。


「どうしたんだよ」


「う、しろ」


 後ろを振り向くとどす黒い肌をし、大きい羽四枚ついた巨大が立っていた。


「逃げるぞ!」


 星乃の手を引っ張り、教室からでた。


 なぜ女である星乃を助けているのか自分でも分からなかった。

 正直信用はできない。


 星乃はウザいが、話すのは割と楽しい。

 友達を助ける理由なんてこんなんでいい。


「おい!あいつバイオハザードでGウイルス打たれたみたいになってるぞ! ふおぉぉぉぉ!!」


 興奮した声で走りながら言った。


「そんなこと言ってる場合?!てか、バイオハザードって何……」


「さぁ喋ってないで逃げるぞ!」

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