きえぇぇ!
翌日僕はあまり学校に行きたくなかった。
なぜなら星乃 萌音が隣にいるからだ。恐る恐る、教室の扉を開けて席へ向かう。
隣ではいつもどうり星乃が女子達に囲まれて話している。
「星乃さん、この問題教えて!」
「星乃さん、ちょっと相談のってほしんだけど!」
「星乃さん、…」
うん、賑やかだ。というよりうるさい。やっぱり殺しておくべきだった。
星乃は一人一人しっかり聞いて対応していた。聖徳太子も驚くレベルだ。
「おい、暁月!ちょっとジュース買い行こうぜ!」
「おう!」
「なぁ、暁月……」
「ん?」
「星乃さんまじ可愛いよな〜 な? な? な? な? てかお前隣の席とか羨ましいぃぃぃぃ!!」
そう和也は女好きだ。
「やめとけ、女と関わると裏切られるぞ」
「暁月はまじ女嫌いだよな〜……あ! やっぱ、母親が不倫したからか? おい、そうなんだろ? 可哀想なやつだなぁぁ!」
このうざい生き物は僕の友達の木村 和也(きむら かずや)だ。
なぜこの生命体を友達に選んだかというと、超目立つけいつといれば、
『あのうざいやつじゃないやつ』と世間からは僕の称号がつく。
素晴らしいモブポジションだ。
金髪でチャラくて顔だけの生命体とは"友達をしてあげてる"が正解だ。
ちなみにこいつが友達と思っているやつは全員こいつことを友達と思っていない。
「あんまその話すんな。消すぞ」
「あーごめんごめん! まぁ、お前みたいなモヤシくんには負けませんよ〜〜ウププ……。」
制服で分からないだけだろうが、間違いなく和也より筋肉はある。
そして、自信満々に言っているが、僕ならいつでも消しずみにできる。
授業中、右隣から声が聞こえてきた。
「暁月くん、この問題どうやって解くの?」
星乃だった。星乃はずっと僕の二の腕を人差し指でツンツンしてくる。
こいつは返事をするまで続くのだろうか。
「おい!話かけんな!」
小声で叫ぶ。
「え、いいのかな?そんなこと言ってえぇ……」
小悪魔のように笑い、言ってくる。さすがにバラされたくないので観念する。
「はぁ、どれだよ」
「これこれ〜」
「確率漸化式くらい自分で解けよ」
「確率漸化式…?」
まずい二年の内容だった。入学してたった三ヶ月の我々が解けるものではない。学力を偽っているのもバレてしまう。
「へ〜二年の内容までわかるんだ〜」
「たまたま漸化式知ってただけだ。別に予習していたわけではない。」
「ふ〜ん、そういうことにしときましょうかねえぇ」
うざい。うざすぎる。和也とは全くベクトルの違うウザさだ。
消しずみにしたい。
しかも和也の方から視線を感じる。狙っている女と話しているのだから少し嫉妬していたのだろう。
僕はこの女を狙う気など微塵もない。そもそも自分が誰かと交際するなど想像もできない。
昼休みになった。
「さぁ、俺達の星乃さんを奪った暁月 勇を許すなあぁぁぁ!!」
「うぉぉ!!」
面倒くさいことになりそうだ。少し腕に自信がある星乃信者が暁月を体育館裏まで連れてきた。
「おい、俺らの女神様と気安く話しやがって殺されたいのかぁ? あぁん?」
こいつらは頭がおかしいのだろうか。
「言っている意味が分からない」
「お前授業中楽しそうに話していただろ? あぁん?」
「別に楽しくはないが話していたな。てか、普通にお前らも話せばいいだろ?自分達が女の子と話せないからってやつあたりしてくんな雑魚男子」
「はぁ?やっちまおうぜ! あぁん?」
あんあんうるせぇな。
喧嘩を買ってもいいが学校では力をだせない。だから、大人しく殴られることにした。
僕は、リンチにあった。
ちなみに、あとかたも無く身体を消されない限り僕は死ぬことはない。殴られた傷は魔力ですぐに治る。
僕の治癒魔術は欠陥品で自分にしか効果がない。
「おい、大丈夫か?」
走ってきた和也が言う。
「あぁ、大丈夫だ。」
顔を見て僕は、言った。
和也は不思議そうな顔をしている。
「どうした?」
「お前なんで傷一つ無いんだ?」
傷を治すのは癖になっている。なんならオートヒールと言っても過言ではなかった。
ただ、この場合は治すべきではなかったのだろう。
「ああ、あいつらのパンチ弱すぎて、まじ猫パンチかと思ったぜ」
「そうなのかよ。心配して損したぜ! おいぃ、ウェイウェイ!」
笑いながら言った。
なんなんだこいつは……。
日が落ちて、真っ暗な時間帯に、星乃信者らと遭遇した。周りには僕と彼らしかいない。
「どうしたんだ?」
「今からお前を殺すんだよ!」
「昼にも絡んで来てまた喧嘩売りに来たのかよ。星乃に近づいたのがそんなに嫌なのかよ……くだらない」
どうやら僕は、囲まれていたらしい。周りには自分と敵しかいないので。
暁月はクリムゾンの姿になり、赤黒の血の剣を円を描くように周りの敵を斬った。
信者のボス的存在は少し怯えた声で言った。
「たまたまだ!全員やれ!」
「お前の"たまたま"も切り刻んでやるぜ!」
次々と来る敵をすべて切り刻み、ボス一人となった。
「そいつらは雑魚だからな、いい気になるなよ。名前ぐらいは聞いていてやる。」
「俺はクリムゾン」
深く、低い声で言って、魔力で作り出した、赤黒いフード付きのローブを身にまとい、フードを深くかぶる。
「そうか、俺はクラウザーだ」
学校での名前とは違うことに疑問を持ったが表情を変えない。
「お前はここで死ぬ!これぞ俺の本当の姿。この姿を見て生きたものはいない。」
背中から羽が生え、頭からは角が生えてきた。
すさまじい魔力量だ。
クラウザーは空中からこちらに飛んできて、爪で攻撃する。
「きえぇぇ!」
それを暁月は、赤黒い剣で防ぐ。
「来るなら黙れよ……」
目に見えないような速さで様々な方向から攻撃して来るもすべてパリィする。
正面から向かって来たので、爪を剣で流し、羽を切り落とす。
「もういい面倒くさい」
そして、辺りが暗くなり始めた。
それと同時に周りの死体の血を自分の周囲に集め、左目は黒い炎に包まれた。
自分の近くから血をたどって黒い炎が広がり、一足で距離を詰め、血と黒い炎をまとった剣でクラウザーの上半身と下半身を一刀両断した。
黒い炎はクラウザーの血に燃え移り、クラウザーは「ゔぁぁああ」と叫んで苦痛を訴えながら燃えて消えた。
僕はクラウザーの最後を見終えて、ゆっくりその場を去った。
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