お前限定だ!バーカ!!
僕は十五歳になり、ハーグワード学園へ進学した。
もちろん、点数は合格者平均のマイナス1点を取った。平均以上の点数を取ると、勉強は普通ぐらいにはできるんだなと思われるからだ。
ただ…平均を把握するのが何よりもしんどかった。
ハーグワード学園の受験者をすべて把握し、どのくらいできるか、透明魔術(インビジブル)を使って家に侵入して調べた。
その中で受かるやつだけを厳選して平均だして、さらに、平均マイナス1点になるように全神経注いだ。
圧倒的に満点取る方が楽である。
まぁそんなことはどうでもいい。
今は入学式の最中である。
「新入生挨拶、新入生代表…」
これから言われる名前のやつとは関わってはいけないな。
「星乃 萌音さん」
「はい!」
元気よく返事をしていた。
「おい、あの人めっちゃ可愛いぞ!」
「俺、後で連絡先聞くわ」
「お人形さんみたい!」
絶対に関わってはいけない人だと確信した。
確かに桜色になびく綺麗な髪、綺麗な桃色の瞳。
さらに可愛いらしいのにどこか頼りになりそうな感じがするとことか魅力的だと言えるだろう。
だが女だ。
そう、女は必ず裏切る。
入学して3ヶ月が経った。友達は割と多い。女にモテる人の近くにいれば自然と自分は引き立て役になれる。
最強のモブポジションだ。
あまりにも陰キャをすると逆に目立ってしまう。
木を隠すなら森の中、人を隠すには人の中とも言うからな。
そしてこの三ヶ月間、割と地獄でもあった。なぜなら、隣には、星乃萌音がいるからだ。
こいつはいつも僕で遊んでくるのだ。
「ねぇ、暁月くん」
「なんですか?」
暁月は少し怒り気味で返事をする。
「キスしたことある?」
「ないけど……」
「可哀想ぉぉ! え、私とする?」
「気持ち悪いなぁ……」
「え? 照れ隠しぃぃ?? 可愛い〜」
このように非常にうざい。ただでさえ女と関わりたくないのにこんな変人と席が隣になったのだ……。
---
色々あって、玄関の前で目があった今に至る。
「何…してるの?…」
いつもの星乃と違って割とドン引きして少し驚いたような表情で聞いてくる。
「あの…」
非常にまずい。本当のことを話せば、自分の人生が百八十度変わってしまう。
そう思い、体が勝手に土下座の体勢に入る。
「な、何も見なかったことにしてください!…」
気づくとそう叫んでいた。
「ええ? 顔を上げて?」
ゆっくり顔を上げ、目を合わせる。
「暁月くんって〜、クリムゾンだったんだ〜」
「い、いや……えぇと……」
何も言葉が出てこない。
「暁月くんってぇ、結構顔にでるんだね〜」
いつもの星乃だ。
しかも、初手から聞かれたくないことを聞かれる。
「めっちゃストレートだな…。とりあえず誰かに聞かれたらまずいから僕の部屋で話そう」
「えぇ? 女の子部屋に連れ込んじゃうんだ〜」
腹立つが、返事せずに部屋に案内する。
今までなら女のような下等生物を自分の部屋に上がらせるなんてありえない話だ。
この状況に少し吐き気を覚える。
仕方がない、緊急事態だ。
イスに座らせて、その対面に自分もすわった。
彼女は慣れないのか意外にも少しそわそわしている。
「なんでもするので、クリムゾンの正体が僕だということは誰にも話さないで欲しいです」
僕は頭を下げる。
「へ〜なんでもするんだ?」
星乃は意味深な笑みを浮かべ煽るよに言った。
何を要求されるのか……。考えただけでも恐ろしい……。
「ま、まぁ……考えとくから……」
「はぁ……」
「なぜ暁月くんは実力を隠し、クリムゾンとして活動しているの?」
「女性が嫌いだからだ。目立つと良物件だと思われるからな。」
殺すという手もあるが彼女は学年一の人気者だ。この時間に行方不明になれば同じマンションに住んでいる僕が真っ先に怪しまれる可能性がある。
「ふ〜ん、女性が嫌い…かぁ……」
彼女は少し引いているようだ。隠しても仕方ないことなのではっきりと言ったが、女性の前で女性を嫌いと言うのは最低だろう。
「確かにいつも私と話すとき嫌そうにしてるもんね〜」
声には出さなかったが、「それはお前限定だ!バーカ!!!」と盛大に突っ込んだ。
「なんで女の人がきらいなん?」
「そ、それは」
前世のことは思い出すだけで吐き気がする。
「ごめん、言えない……」
「そう……まぁいいけど。じゃあ、なぜ盗賊狩りをしているの?」
「盗賊から金を奪うためです。金は女の人とは違って裏切らないからな」
「そうですか……。なんか可哀想な人ですね」
いちいち腹立つ。
こちらは取り調べを受けている気分なのに……。
「まぁいいや、もう帰るから」
「あ、はい……」
怒らせてしまっただろうか。こいつの機嫌を損ねるのは不味い。
出来るだけ早く返したかったので帰ってくれるのはありがたい。そして帰り際に彼女は言った。
「では、私からの要望をきめました!」
「なんですか?」
「私と友達になりなさい!」
「は?!」
驚きと、前世の記憶から不快な感情が蘇ってくる。だが、断ることはできない。
あれ?これ……僕の平穏な暮らしは……終わり?!?!
「わ、分かった……」
「うん!じゃ、また明日ね!」
彼女は笑顔で手を振りながら帰った。
これは新手の嫌がらせだろうか。いや間違いなく嫌がらせだろう。
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