将来について

 僕の名前は 暁月 勇 奇跡的に前世と同じ名前だ。


 3歳になり、この世界の言語をカタコトだが話せるようになった。読み書きもある程度なら出来る。

 前世の能力や知識は引き継いでいるらしい。

 僕はいつも親やメイドさんに見つからないように魔導書を読み漁っている。勇者への憧れはあるからだ。

 魔術は出来るだけ習得しておきたい。



 ある日、いつものように隠れて書庫へ向かう。

 途中両親の喧嘩の声が聞こえた。


「不倫……したんだな……離婚しよう」


「あんたみたいな男こっちから願い下げだわ!」


 母さんはすぐに部屋を去った。父さんは頭を抱えている。

 どうやら、離婚は決定らしい。

 やっぱり女はゴミだ。

 父親はそこそこ身分が高い貴族なのになぜ母さんは他の男に行ったのだろうか。割と良物件だが……。

 暁月家は裕福な家なのでこれから生活には困らないだろう。



---



 五歳になった。

 この世界の言葉はマスターした。


「お前は本当に五歳なんだよな」


「うん!五歳だよ!」


と魔導書を読みながら言う。



 今日は父さんにTEON(テオン)に連れていってもらっている。

 今は車の中である。


 窓を覗くと景色はまるで現代日本である。正直ここが異世界であることが信じられない。


「父様ぁ」


「なんだい?」


「この車はどうやって動いているの?」


「魔力だよ。魔力を蓄えて運動エネルギーに変換するアーティファクトが組み込まれている」


「そーなんだ!」


 父さんから適当に聞き出したことをまとめると……

 この世界では、電気の代わりに魔力を使っているらしい。

 現世なら、電気エネルギーを運動や光、熱などに変換するが、電気ではなく魔力らしい。

 そして、技術の発展具合は現世とあまり変わらない。車や、電車は走っているし、電気もつくし、スマホもあるし、トイレも洋式だ。


 自分の異世界の想像とは違うが何不自由なく生活できる。さらに、魔力は電気にもできるので、現世の科学技術よりもこっちの魔力技術が将来発展しそうだ。



「父様ぁ」


「なんだい?」


「最後の質問なんだけど……なんで女の人ってゴミなの?……うわ!」


 父さんが動揺で手元を狂わせて反対車線の車に当たるところだった。


「そ…それは母さんのことかな?」


 笑顔で言っているが、これは……おそらく怒っている。

 父さんはあまり物をガツガツ言わないが話は真剣にしてくれる人だ。領地の人からも愛されている。

 

 これが気まずいというやつか〜



 また、魔力を持っている人とそうでない人が存在する。ただ、魔力を持っている人の方が将来、職に困らないようだ。


 僕は、両親が魔力持ちで魔力量が他人より多いらしい。五歳で必ず受ける定期検診では、魔力量0と判定された。

 あまり結果は気にしないようにしていた。

 なぜなら僕は転生直後魔法を放ったからだ。おそらく魔力量が多すぎたのだろう。魔力量0で魔法を放ったのは前代未聞らしい。

 そのことは他言しないように父親と約束した。


 そして、この世界にも学校が存在するらしい。十五歳になると、受験できる大学みたいなものだ。

 魔力があると、魔剣士学園や、魔法科学校などに受かりやすい。魔力無しでも筆記で満点を取れば受かるかも知れないが、僕は、もちろん受けない。

 

 というより受けれない。


「勇、お前は魔剣や魔法には絶対行くな!」


「なんで?」


「お前は世間では魔力0扱いだからな」


 このように父さんが受けさせてくれないからだ。

 そこで、魔力がない人でも職に就けるように普通の学問を学ぶことのできる学園に行くことにした。

 現世で言う、普通科みたいなものがだ。


 逆に魔力持ちでも受験できる。

 僕は、モブに徹するため、魔力量を隠さなければいけないので、ハーグワード学園へ進学するつもりだ。


 そして、前世から憧れだった1人暮らしをしよう。




 十歳になった。

 独学で色んなことを学び、もう学ぶことなどないと言える…と思う。

 

 趣味で読んでいる屋敷にある魔導書の魔術はすべてマスターした。

 父さんにしごかれた剣術も最高峰と言えるだろう。


 僕の実力を知っているのはこの世界で父さんとこの家のメイドだけだ。


 魔術とは別に錬金術があるらしい。

 死ぬほど学びたい。


 そして夜になると……


「ぶーん、ぶゔぅぅぅん……ふぉぇえ!」


「なんだお前は!?」


 勇は全身黒服で飛んで現れた。

 今から金稼ぎをする。もちろん一人暮らしのためだ。

 バイトなんかしたくないからな。

 盗賊を狩ると運搬途中の金と賞金が出てとても美味しいのだ。


「さぁ貴様ら有り金すべて出せ!」


「このくそガキを潰せ!」


「ガキ相手に武器もった大の大人が群がんなよ〜」


 僕は適当に血の剣を振り回した。



「黒い服だと返り血が見えるなぁ」


 このとき僕は黒服ではなく、赤を足した色の服を着るようになった。


 深紅のローブをまとい、血を操るその姿から僕は『クリムゾン』と呼ばれるようになった。



十四歳になった。ハーグワード学園の入試に向けて勉強!ではなく……錬金術を自由自在に扱えるようになってハマっていた。

 夜のお仕事は錬金術の習得により、捗っていた。

 錬金術でいつでも盗賊を拘束できるので、そこから上の組織を潰すための尋問いや、拷問をする。正直これが一番楽しい。

 実力でねじ伏せた後、怯えた表情をする生き残りに拷問をする。


「ねぇ」


「ひぃぃ!」


「そんな怯えんなって」


「なぁ………上には誰がいるんだ?」


 腹を少しエグッても意外と人間は死なないっぽい。相手は、苦痛のあまり、声が我慢できないらしい。

 叫ばれると面倒だ。


 前世の記憶もあり、EDも前世から引き継いでいる。たぶん女の裸をみても勃たないだろう。

 そんなことはどうでもいい。

 

 とりあえず大事なのは、拷問で引き出せた情報だ。

 上で指揮を取っている者は人間ではないとのことだ。この世界には、魔人、魔族、悪魔が存在するらしい。だがそんな話は聞いたこともない。

 おそらくそいつらは、人間の身体を受肉することでこの世界にこれる。つまり、彼らは人間の見ためをしていて、判別しにくいから誰も知らなかったのだろう。


 学校にも彼らがいるのだとしたらとても退屈はないだろうな。

 来年が楽しみだ。

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