第24話 次の日の朝

「む~」

 朝日が眩しい。


「むゅ?」

 寝過ごしたのか? と思ってボクは飛び起きた。

 ケンちゃんがギターを見つけた瞬間を見過ごしてしまったかもしれない。


 比較的急いで、できるだけ音を立てないように唐紙のところに行く。

 昨晩と同じようにそっと唐紙を開ける。せっかくだからクレアボヤンスではなくて直接見たいし。


 小窓から入る朝日で、お布団の中でちんまりと寝ているケンちゃんが見えた。

 ケンちゃんはお行儀よく寝ている。ボクなんてお布団の中でぐるぐる回っているのに。2枚か3枚かけていたはずのお布団が、気づくとなくなっていたりする。


 ギターはどこにあるだろう。

 そう思って探すと、昨日、ボクが置いたままの場所にあった。


 気づいていないのだろうか? ボクが置いたままな感じがした。

 見逃したんじゃなかったならよかった?


 しばらく見ていた。

 ケンちゃんは寝ている。


 時計を見る。

 朝の6時……。


 ケンちゃん、起きないのかな?

 しばらく見ている。


 昨日は遅くまで穴を掘っていたもんね。

 ケンちゃんは寝ている。


 いくらおじいちゃんの家の裏山だったとしても、夜の9時過ぎまで穴を掘っているのもどうかと思うよ。

 ケンちゃんはまだ寝ている。


 ケンちゃんを見ていた。

 まだまだ起きる気配がない……。


 ………………飽きた。


 おばあちゃんに聞いてみよう。

 そう思って、お台所に行った。


「おばあちゃん」

 お味噌汁の匂いがする。おいしそうないい匂い。お鍋の前におばあちゃんがいた。


「あら、ショウちゃん。おはよう」

 振り返っておばあちゃんが言う。


「おはようございますっ」

 あいさつ、大事だよね。


「ねえねえ、ケンちゃん、ギターに気が付いてた?」

 すぐに聞いてみた。


「どうかしらね?」

 おばあちゃんは首をかしげる。


「ケンちゃん、昨日は裏山の倉庫に行ってて疲れたみたいよ。土だらけになってたから」

 知ってる。その様子はボクの千里眼クレアボヤンスで見ていたから。

 でも言わない。


「お風呂も半分寝ながら入ったみたい。だから気が付いてないかもしれないわね」

 それはボクも寝てたから知らない。クレアボヤンスはボクも起きてないとわからない。サイコメトリーは物に触らないとダメだし。


 ケンちゃん、ホントにどうしてそこまで頑張ってたわけ?


「ショウちゃんはもう起きるの?」

「うん」

 けっこうよく寝たから眠くない。


「朝ごはん、お手伝いしてくれる?」

「うんっ」

 お世話になっているんだから、それくらいしないとね。


「おトイレ行って、お着替えして来る。おばあちゃん、待っててね」

「はいはい」

 おばあちゃんは嬉しそうにそう言ってうなずいた。


「お手伝い、お手伝い。おばあちゃんの、お手伝い」

 なんとなく、そんなお歌をうたっていた。


 それからおばあちゃんと一緒に朝ごはんを作った。

 お皿を運んだりする程度だったけれど、おばあちゃんは喜んでくれた。かわいいこのボクの手伝いだもの。おばあちゃんも嬉しいよね。


 おばあちゃんが喜んでくれたから、ボクも嬉しい。

 それにボクが大好きな卵焼きも作ってくれた。


 いい朝だ。


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