第17話 おまけ 

 それから、おばあちゃんとボクとケンちゃんの三人で、居間兼おばあちゃんのお部屋で桃のジュースを飲んだ。


「おいしいわね」

 ちゃぶ台に座って桃のジュースを飲んでいるおばあちゃんはとっても嬉しそうだった。


「うんっ」

 ボクも飲んでみて『おいしい』って思った。

 ケンちゃんはまだ飲んでいなくて、おばあちゃんの様子を見ていた。


「ありがとう、ショウちゃん、ケンちゃん」

「どういたしましてっ」

 お礼を言われたらこういうのは基本なのである。

 でもケンちゃんは

「俺は別に……」と答えた。


「ケンちゃんはショウちゃんの面倒を見てくれたでしょ。だからショウちゃんがこんなに嬉しそうなのよ」

 ボクはとっても嬉しかったから、おばあちゃんの言葉にコクコクとうなずく。

 桃のジュースがおいしかったこともあるんだけど、おばあちゃんが喜んでくれたことがうれしかった。

 それはケンちゃんのおかげだと言えなくもない。


「……大したことじゃねーし」

 ぼそっと言って、照れ隠しのようにジュースを飲む。


 そして驚いた顔をした。

 コップの中に残っているジュースを見て『意外にうまいぞ』という顔をする。考えてること、わかりやすすぎだよケンちゃん。


「みんなで飲むと、おいしいでしょ?」

「ショウちゃんの言うとおりね」

 もともと桃のジュースがおいしいということもあるけれど、ひとりじめして飲むのではなく、みんなで分けて飲むと、もっとおいしくなるという魔法があるのだ。


「……じいちゃんは?」

 ケンちゃんが地味に言う。

「あ……」

「あら?」


 忘れてた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る