第10話 スコップの歌、再びの続き

「す……スコップ?」

 堂々と答えようとしてはいたけれど、動揺を隠しきれない感じでケンちゃんは答えた。


「それでいいの?」

 なんか聞いてみた。

「え?」

「ホントにそれでいいの?」

 念を押してみた。

 別に意味はなかったけれど、うろたえているケンちゃんがなんか面白くて。


「だって、スコップだろ?」

「ふっ……」


「え? 違うのか」

 なんか楽しい。


「不正解」

「シャベルなのか?」

 ケンちゃん、悔しそう。ふっふっふ。もっと悔しがれ。


「正解は……」

 ケンちゃんは息を殺してボクを見る。

 手に汗を握るような緊張の瞬間。


「どっちでもいい」

「あ゛?」

 ドスの利いた声。

 ケンちゃんは、いたいけなボクに向かって、ものすごい顔で睨んできた。


「シャベルでもスコップでもいいんだよ」

「どっちでもいいんならスコップでいいじゃないか」

 ケンちゃんの言葉にボクは首を振る。


「ダメだよ。ちゃんと『スコップとシャベル』って答えなきゃ。片一方だと正解とは言えません。しいて言うなら半分だけ正解」

「くっ」

 悔しそう。へへへっ。なんか嬉しい。


「ケンちゃんはいつも二択なんだよ」

「それはショウが『スコップかシャベルか』って問題を出したからだろ」


「それに引っかかっちゃったんだよ。本当は、第三の選択肢を見つけなければいけなかったんだ」

「『スコップとシャベル』が第三の選択肢?」

「うん」

 うなずく。


「スコップとシャベルの違いは?」

「スコップの方が歌いやすかったんだ」


「それだけの理由なのか?」

「うん」

 ボクはうなずいた。


「くっ……」

 ケンちゃんは悔しそうな顔をしていた。

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