3 シャベルとスコップ

第7話 ダジャレを言っているのは……

 ボクはケンちゃんと、裏山にあるおじいちゃんの倉庫(先祖伝来の洞窟由来)に再び来ていた。

「……………………」

 ケンちゃんは黙々とシャベルで地面を掘っている。午前中の続きで、ゴロンと出た石の後をザックザックと掘っていた。


「……………………」

 ボクもそれを黙って見ている。


 ボクがそうしてくれと頼んだからだ。

 地底人に会うならば、下に向かって掘るのが良い。


 いるかどうか、わかんないけど。

 ケンちゃんが手を止めてボクをみる。


「俺らは……、地底人なのか?」

 あそっか、そっちの設定を忘れていた。

「そうそう」

 コクコクとうなずいて言う。


「掘ればいいのか?」

「そうすれば、いつか他の地底人に会えるんだよ」

 もしもいるのならそうとう掘らなければいけないだろうけど、それは言わなくてもいいだろう。ケンちゃんのやる気をいではいけない。


「……………………」

 ケンちゃんが黙って掘り出す。黙々と掘っていた。


「…………」

 ボクはそれを見ていた。


 ケンちゃんは、ザックザックと掘っている。

 力強く、ザックザックと音がする。


 ザックザック、ザックザック。

 ザックザック、ザックザック。


「ふぁ~ふっ」

 ついうっかりあくびが出た。

 ザックザックと掘っていた音が止まり、ケンちゃんがボクを見ていた。


「ごめん、続けて」

 今のはマジでボクが悪い。

 ムッとした顔でボクを見て、それからまたザックザックと穴を掘る。


 ザックザック、ザックザック。

 ザックザック、ザックザック。


 ザックザック、ザックザック。

 ザックザック、ザックザック。


「…………シャベルがしゃべった」

 キュートな声でボクが言うと、ケンちゃんがピタっと止まる。


「………………」

 ケンちゃんはボクをじっと見ていた。

 ボクはケンちゃんがどんなことを言ってくれるのか、ワクワクしながら待っていた。とってもとっても楽しみだったんだよ。


 それなのにケンちゃんは何も言わず、また穴を掘る。

 ザックザック、ザックザックと……。


「何か反応してよ」

 ボクがそう言うと、

「ショウのくだらないダジャレに付き合いたくねんだよ」

と、手も止めずにそう言った。

 そして、ザックザック、ザックザックと穴を掘る。


「ダジャレじゃないもん。しゃべってるもん」

 ケンちゃんはしかめ面して手を止める。


「なんて言ってるんだ?」

 ボクはしばし、固まった。それを聞くのか?


「…………ざっくざっく?」

 それを聞いたケンちゃんがしかめ面のまま固まる。


「それ、しゃべってねーから」

 ムッとして穴を掘りだすケンちゃん。

 ボクはそれを見つめる。


「ケンちゃん」

「なんだ?」


「ヒマだよ」

「ひまだからって、くだらねーダジャレ言ってんじゃねー」


「くすくす」

 ケンちゃんが言ってたことを聞いておかしくなってしまった。


「今の、ダジャレじゃねーからな。『じゃ』しか同じじゃねーし」

 ちまちまと指摘するケンちゃん。


「わかってるよ。ケンちゃんにハイセンスなダジャレ、求めてないし」

 ケンちゃんはムッとしたようだったけれど、穴を掘り続けていた。


 ザックザック、ザックザック。

 ザックザック、ザックザック。


 ザックザック、ザックザック。

 ザックザック、ザックザック。


 ザックザック、ザックザック。

 ザックザック、ザックザック。


 ケンちゃんの手が止まった。








「ダジャレを言っているのは誰じゃ?」



 ボクは何も言わなかった。







「反応くらいしろよ」

 小さな声で、ケンちゃんは言った。


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