超短編小説
@NanAna13
第1話 ひとりぼっち。
「みんな、夢をみるんだろうな」
眠った街を背に、公園のベンチに腰掛けた僕はそう呟く。
誰にも届かない、静かなメッセージ。
きっと誰かに、届けたかったメッセージ。
僕は座ったまま、まぶたをそっと閉じる。
夢なんて、見れない。
けれど、それで良かった。
たった一瞬、現実がぼやける。
その感覚だけで、良かったんだ。
淡い夢に、身を委ねる。
家での孤独も、学校での喧騒も。
その一瞬だけは、忘れられた。
ーー目を閉じて、どれくらい経っただろうか。
時間さえ、誰も教えてくれない。
僕は、そっとまぶたを持ち上げた。
夜の街に、目を向ける。
辺りに漂う薄い霧が、光の輪郭をぼかして運ぶ。
数え切れない程の夢が、幻想が、そこにはあった。
見えたわけじゃない。
そんな気がした。
「……そろそろ、帰るか」
静かに、自分自身にそう言い聞かせた。
僕はゆっくりと立ち上がり、歩き出す。
"みんな、夢を見るんだろうな"
きっと、自分に向けたメッセージ。
それでも、たぶん、夢は見れない。
僕はまた、夜の憂いに、溶けていく。
超短編小説 @NanAna13
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