復活


 不味い…。この状況は本当に不味い。


 チラリと仲間達の方を見てみると明らかに苦戦しているのが分かる。

 ゾンビが止まっている間にある程度殺しておいたようでまだそこまでの数は群がってきていないがこのままでは確実に死ぬ。

 速く隊長ゾンビを倒して鍵を奪いたい。だが奪おうにも倒すのは至難の業。


 まず最初に通常ゾンビの攻撃が無視できないものになってきている。

 肉体は一般人な事もあり全体的にそこまで強くは感じない。


 だがその経験はヘレティックのメンバー。

 恐らく全ての経験がある隊長ゾンビとは違い、量産型のゾンビでも扱えるように一人の経験を抽出したのだろう。

 役割が固定化されている分、連携されるとその厄介さは跳ね上がる。


「「「ア〜〜〜〜〜〜〜!!!」」」


 向こうの仲間達が猛攻で怯んでいる間に数体のゾンビが寄ってくる。

 近くにある物を武器に迫ってくるこいつらを倒すのは集中しないと足元をすくわれる。

 そして何よりキツイのが…。


「「ア〜〜〜〜〜〜!!!」」


「aaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!」


「うぐう!!! さ、流石は隊長ゾンビ…。いい動きしてくるなあ!!!」


 ゾンビ達の間に隠れることで射線を隠し、確実にこちらを仕留めに来る隊長ゾンビの厄介さだ。

 更に隊長とは違いこの隊長ゾンビは味方ごと撃ってくる。

 俺の知る隊長には無いデータ。

 仲間思いの隊長の死体にこんな事をさせるなんてと怒りが再び湧き上がる。



 そして地味にキツイのは先程の大剣からガードした際に刀が壊れてしまった点だ。

 必然的に接近戦は体術一本に縛られる。

 だが隊長ゾンビだけでなく普通のゾンビまで相手をすると体が持たない。


「ア〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」


「ふん!!!」


 こちらに掴みかかろうとしてくるゾンビを逆に掴み返し、一本!

 警部直伝の柔道技で地面に叩きつけ、そのまま頭を踏み潰す。


 ……この行為だ。ゾンビである以上確実に脳みそを損傷させなければいけないのが素手の俺にはキツイ。

 確かにヘレティックのメンバーとして戦い詰めだった俺の体は強い。

 それに加えて武術家を始めとした多くの仲間達に教わった近接格闘術。俺は猛獣だって難なく倒せる強さを持っている。


 だがそれでも……頭は硬い。

 人間が生き残るために必要な部位である脳みそを守る所だ。

 それを何回も壊しているんだ。

 手や足は消耗品。このままではオレの体に限界が来る。




 敗戦ムードが俺達に流れる。

 向こうの銃声も段々少なくなる。見た感じ全員生きているから持ってきた大量の銃がもう尽きてきたのだろう。

 このままじゃ駄目だ…。何か、何か逆転の一手は無いか?


「aaaaaaaaaaaaaa!!!!!」


「うおおおおおおおお!!!!!」


 奴の大剣を避け、中心部にパンチを決める。

 刀が無いからもう受け止めるのは無理だ。

 少し無理してもこの大剣は確実に壊さないといけない。


 ジンジンする手を抑えもう一発。奴が動いた瞬間にカウンターを決める。

 大剣にヒビが入った。後一撃で壊れる。


「aaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!」


「「ア〜〜〜〜〜〜!!!!」」


 だが奴はパンチで俺を遠ざけ、そのタイミングでゾンバが迫りくる。

 立ち回りが上手い。ゾンビ達も気配がまるでしなかった。


「ちぃ!!!」


 体がギシギシ痛い。

 速く仕留めなければいけないのにこのお邪魔虫どもがうざったらしい。

 向こうも限界が近いのか悲鳴のような怒号が聞こえてくる。


「くそが……」


 悪態が漏れる。まさかゾンビの最終進化がここまで厄介だとは…。

 秘密兵器を使う隙すら無い。

 俺はゾンビ達から距離を取り、サブマシンガンを全力で撃ち続ける。


 出し惜しみは駄目だ。

 ワイアーガンを使用し、ゾンビ達の真上へと移動。

 そのまま二丁のサブマシンガンで銃弾の雨を降らしていった。



「「「ア〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」」」


「このままくたばれ!!!」


 隊長ゾンビの方もしっかり警戒しつつ一般ゾンビを的確に倒す。

 弾丸の一発で確実にゾンビを一体倒す。

 お陰でだいぶゾンビの数が減ってきた。




「…………あ?」


 その時だった。全身に危険信号が発信された。

 体がガクガクと震え始める。首筋にピリピリと電流が流れるような痛みが襲い、寒気が現れる。


「まさか!?」


 隊長ゾンビの方を向くと、体を完全に仰け反らせていた。

 体の上半身が完全に見えなくなるほど深く深く力を溜めている。

 ……奴の手には大剣が握られていた。


「投げる気か!?」


 無理だ避けきれない! もう投げる寸前だ!

 警戒はしていた。だがどれだけ警戒しているつもりでもその実態はゾンビに気を取られていたのだろう。

 このままじゃ俺の体は確実に消し飛ぶ。


 何か…。何か無いのか…!? この状況を逆転する手立ては!?



 視界が歪み、俺の思考は過去最速で回り出す。

 だが駄目!!! どれだけ考えてもこの状況を解決する手立ては見つからない!!!



「まだだ!!!」


 こうなった以上仕方ない。


 秘密兵器を使用する!!! 十中八九上手くいかないが奇跡を願うしか道はない!!!




 俺は大事に今まで使わず隠しておいたマグナムを取り出そうと胸ポケットに触れる。






 その時だった。何かが…何かが俺の目の前に飛んできた。


「なに!?」


 認識するより先に俺はその何かを手に取った。

 危ない行為。馬鹿げた行為だ。

 だが俺の心はその何かを危険な物だとは認識しなかった。


「これは…刀!」


 鞘に収められた刀。それが何かの正体だった。


「aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!」


 疑問に思う暇はない。奴は既に投擲をしている!

 目の前に迫りくる大剣を居合の要領で、何度もパンチしたことでヒビが入った箇所から確実に破壊できる場所目掛けて斬りかかる。

 そうして大剣は真っ二つに切り落とされた。


「aaaaaaaaaaaaa!!!」


「よっし!!!」


 俺も隊長ゾンビもお互いに距離を取る。

 隊長ゾンビにも分からなかったのだろう。


 俺に刀をくれたのは何者なのか? だから俺達はお互いに刀が投げられた方向を向いた。








「…………え?」


 そこに居たのは本来であればありえない人物。

 先の戦いで大きな怪我を負い、グロリアの医務室で眠りについているはずの美女。



 リラさんが居たのだ…。





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