抜けた記憶


「くそおおおお!!!」


「むん!!!」


 俺の刀と剣士の刀がぶつかり、激しく火花が散る。

 俺以外で近接戦闘で剣士を抑えられる人はこのメンバーで隊長しかいない。

 しかし隊長は真っ二つにされたオスプレイの反対側。距離を考えてもうこちら側に来ることは不可能だ。


「おらあああ!!!」


「ぬう!!」


 相変わらず凄いパワー! 更に技術も今の俺を超えている。

 だが一瞬。一瞬押さえたら俺の勝ちだ。俺には頼れる仲間達がいるのだから。


「そこお!!!」


「ぬん!」


「隙あり!」


「ぬがああああ!!!!」


 俺の横から攻撃した医師の一撃を剣士は足で止める。

 だが医師が攻撃モーションに入った瞬間に発明家が即座に放った電流銃が胴体に命中。

 感電し、その場で動けなくなる。


 「落ちろ!!!!」


 その隙をつき、俺はオスプレイの外へと剣士をタックルして叩き落した。

 ぐるぐると空中を回るオスプレイの半分から剣士は落下。だが安心はできない。俺達は現在空中落下をしているのだから。


「私が探偵を支える! 発明家!」


「分かってる!」


 全員が落下体制を取り、全員がオスプレイにしがみつく。外の風圧に負けそうになるが、頑丈な作りと皆が強靭な握力を持っていたお陰で何とか耐えられる。

 発明家の装置の発動を確認後。全員一気に地面へと飛び込んだ。

 ゼリー状のピンク色をした球体が落下した俺達の体を包み、落下の衝撃から守ってくれる。

 辺りを見渡し、他の皆も無事なことを確認した俺は探偵の下へと駆け寄った。


「医師! 探偵はどんな様子だ!」


「生きてるのが奇跡…。今すぐにちゃんとした病院に運ばないと。ひとまず応急措置はしたけど少しでも状況が悪化したら死ぬ」


「隊長達とは連絡が取れた。だがどうやら他のメンバーも先遣隊に襲われているらしい。全員様子がおかしく薬を打たれたのは確定的だと」


 先遣隊のメンバーはもう正気を取り戻さないだろう。

 嗚咽しそうになるのを堪え、現状を整理する。この状況。俺はどう行動すれば良い?


「…………先遣隊がやられた以上。俺達が潜入し薬と博士を破壊するしか無い。落ちてきた残骸に敵が反応する前に急ごう! 医師! しばらく探偵を担いでいてくれ」


「ええ任せて。……万能者。先遣隊の仇。必ず取ろうね」


「ああ!」


 

 先遣隊のメンバー達との記憶が頭によぎる。気づけば俺の手は強く握られすぎてしまい血がにじみ出ていた。

 怒りを胸に俺達は先へと進む。だがこの時俺達はまだ気づいていなかった。


 俺達の敵は博士だけでは無い。……国連が飛ばした衛星が、宇宙から無機質なカメラで俺達の事を監視していた。


















「ハァ…ハァ……ハァ」


 敗走。俺達の現状を表すにはその言葉が相応しい状態だった。

 途中までは上手く言った。どの部隊も先遣隊を追い払い博士のいるラボへと向かっていた。だがそこに予期せぬ伏兵が現れた。


 国連がこの島に猛毒のガスを散布したのだ。それだけじゃない。安全圏から砲撃やミサイルの嵐。

 既に島の形は変形し、地表は生命の過ごせる場所では無くなった。

 俺達は皆散り散りになった。毒ガスから逃げた所に爆撃。恐らく数名は死んでいるはずだ。俺の目の前でも一人。命を落とした。




 ……記者が俺を庇ったのだ。


 突然の爆撃から俺を吹き飛ばし、彼女は爆撃を直に喰らった。

 彼女の体が目の前でバラバラになり、血肉が俺の口の中に入っていくあの感覚…。

 俺は二度と忘れることは無いだろう。



 ……本来は俺が気づくべきだった。だが俺は気づかず記者が気づいた。

 彼女から言われた言葉。あの言葉に俺は夢中になり周囲への警戒を怠ってしまったのだ。 


「ちくしょう…。ちくしょう!」


「………」


 今ここにいるのは俺と医師。そして重症で目を覚まさない探偵の三人だけ。

 研究所内にあるトラップや追っ手を潜り抜けるにはキツイものがある。特に探偵を抱えている医師の疲労は相当のモノ。

 だが医師は決して探偵を俺に寄越さなかった。俺の戦闘力が無いと追っ手に追い込まれジリ貧なことを分かっているからだ。


「……ここまで…か」


「医師? 何を言って」


 医師が突然その場に留まる。後ろにはこちらに向かってくる追っ手。

 全員が強化手術を受けているのか身体能力はゴリラよりも強い。そいつらがプロの経験を持ち襲いかかってくる。

 万全の状態ならともかく今の医師じゃ倒せて数十人程度だ。


「探偵を担いで先に進んで。貴方なら探偵を担いだ状態でも戦闘が可能。私よりも生存率が高いはずよ」


「!? だがそれじゃあ医師が!」


 敵はそこまで迫ってきている。彼女の言うことは正しい。



 でも心が……彼女の意見に反対した。


「……誰かが残らなきゃいけない。私と貴方。どちらが生き残るべきかは明白でしょ?」


「でも!」


「……ねえ勇気。私」















 博士のラボは迷宮のように広い。…いや実際に迷宮となっているのだ。

 お陰でさっきから迷いっぱなし。博士の元へ辿り着けず右往左往している。


「……医師との約束。絶対に守ってみせる」


 この辺りの敵は既に倒されている。恐らく俺達の誰かが既にここまで到達しているのだ。

 だが音がしない。ここより更に先にいるのかそれとも…。



 一切速度を落とすこと無く曲がり角を曲がる。

 しかし……その先で見た光景に足が、全身が動けなくなる。


「警部!?」


 警部…。探偵のコンビで今年40になるおっさんだ。

 もう中年の年だがかなり強く、元特殊部隊所属だとかで訓練中何度も返り討ちにされた。

 そんな優秀な彼が腹に風穴を開け、壁に背を当てダランと倒れている。



 意識は…いや命はもう無い。


「警部……。ちくしょう!!!」


 勢いに任せ、拳で壁に穴を開ける。

 こんな事しても意味ないと分かっているのに…。


 だがこの行動が功を奏した。衝撃で壁から警部の死体がずり落ちた時。俺は確かに耳にした。

 警部の服。普段はメモ帳を閉まっている筈の右ポケットではなく左ポケットから、メモ帳が動いた音を感知したのだ。

 すぐに左ポケットを漁り、中にあるメモ帳を取り出す。


「……これは」


















 多くの仲間が死んだ。だがおかげでここまで来ることができた。

 博士のいる研究所最奥の実験室。目の前にあるドアを開けば博士と対面となる。


「「「…………」」」


 俺と隊長。ここまで担いできた探偵と放火魔。ここまで来ることができたのはこの四人だけ。しかも一人は目を覚ませない重症。

 残りのメンバーの場所は分からない。倒壊が激しくなり医師が足止めしてくれた場所も埋もれてしまった。


 隊長が持っていた発明家の作品。【安全膜】を探偵に被せる。

 これである程度時間は稼げた。生命維持できている内に戦闘を終わらせ彼女を治療しなければ。



 皆ここまでで多くの手傷を負った。だがまだ闘志は消えていない。

 むしろ最初の時よりも燃え上がっている。

 そんな俺達の様子を見た隊長は覚悟を決める表情を取り、言った。


「二人共。行くぞ!!!」


「「はい!!!」」


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