第10話なにも出来ない

 僕は佐渡を保健室に運んだが誰も居らず、手前のベッドへ横たわらせた。

 一度保健室を出て、自動販売機で天然水を購入して、onゼリーを購買で購入して、保健室に戻った。

 横たわる彼女はうなされていた。


 叔母め、佐渡さんを巻き込むことないだろう。


 うなされている彼女の肩に手を置き、揺するが起きそうにない。

 枕元に天然水のペットボトルとonゼリーを置き、谷戸宇に彼女が倒れたことを告げに保健室を飛びだす。


 田岡と談笑している谷戸宇を見つけ、佐渡が倒れたから保健室に行ってやってほしいと耳打ちした。

 谷戸宇は血相を変え、首肯して、教室を飛び出した。


 情けない……僕は彼女に何も出来ない。


 田岡が僕を視つめる。

「今村くん、責めることないよ。大丈夫」

「僕の……せいなんです。責めてくださいよ、佐渡さんの友人でしょ?」

「彼女の選択は彼女の選択で君が罪悪感を抱くことない……彼女の意思で選択して、今のようになったなら彼女が乗り切らなきゃ、だよ。今村くんは気にすること、ない。イジメられてるなら別ではあるけど……」

「でも——」

「しつこい!うだうだ言ってないで、自分のことだけ考えてなよ。ったく……助けを求められた時に傍にいてくれたらいい。今はそれでいい。判った?」

「はい……」

 僕は食い下がるのをやめ、自身の席に腰を下ろし、両手の五指を組み、祈る。


 居ても立っても居られずに教室を出て、廊下に出て、叔母に連絡した。

「もしもし、オバさん。今良い?佐渡さんが倒れた。彼女を極力苦しめるのは止めて!」

『けーちゃん……そぉう。倒れたのは想定外。嘉音ちゃんは手放せない、じゃあ!』

「もしもし、オバさん——」

 通話を切られ、掛け直すが出なくなった。

 クソッ、と吐き、太腿を叩いて、壁に体重を預け、ため息を吐きだす。


 午後の授業は上の空で受けた。

 流石にその日の放課後に僕の自宅を訪れなかった彼女。

 谷戸宇や田岡に責められはしなかった。

 罪悪感が募って、悶々とした。

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