第9話追い込まれた彼女

 僕は翌日を迎えた。

 佐渡の姿はなく、身体に重みは掛かっていない。

 耳を傾け、階下のリビングの声を聴いてみるが、佐渡の声は聞こえない。

 安堵した。

 僕は勉強机の抽斗からレターセットを出し、一枚の便箋に佐渡へ向けたひと文を認め、封筒に入れる。


 僕は洗顔を済ませ、朝食を摂りにリビングに下りた。

「あの娘ったら前にも増してだらしないわ、まったく!!佐渡さんを見せてやりたいくらいだわ、もう……」

 母親が叔母について愚痴を漏らしていた。

 母親は朝からご立腹である。


 僕は登校し、佐渡が席に居ない隙に彼女の机に今朝用意した便箋を入れた封筒を差し込んだ。


 昼休憩に空き教室へ赴くとまだ彼女の姿はなかった。

 10分程経った頃に姿を現した。

「遅れてごめんなさい。時間が指定されてなかったから……こういう可愛いの持ってんだね、今村くんって。意外……」

「こっちこそごめん。用件だけだった……叔母さんがなにかしでかさなかった?されたら、ごめん……」

「なぁっ、なにも……されてない、よ」

「ほんとに……?」

「ほっ、ほんと……だよぅ」

 反応が変だ。

 頬も紅潮していく。

「……佐渡さん、あのぅ——」

「……あっ!あぅぅ……」

 彼女のスマホがSNSのアプリの通知の音楽が流れ、顔をこわばらせた彼女。

 察した、察してしまった。

 叔母は懸念していたようになにかしでかしたのだ、彼女に対して。

「僕のせいだ……佐渡さんを巻き込んでごめんなさい。叔母が来るかもしれないこと、言わなくて……」

「今村くんが謝ることは……はぁぅっ、はぁ、はぁはぁ……」

 彼女が否定している最中に羞恥心を抱くように自身で震える身体を抑え出した。

 彼女はついにその場にへたり込んで、情けないか細い声を必死にあげ、呼んできた。

「いっ……今村ぁ……くぅんっ……」

 どさり、と彼女は倒れた。

 僕は彼女を保健室に運んだ。

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