第4話驚き

 僕は佐渡に話しかけられずに放課後を迎えた。

 佐渡は谷戸宇とあと一人の友人と密やかに会話を楽しむだけで僕には接触してこない。


 放課後になり、教室を出ようと朝から立ち上がると隣のクラスの図書委員の桜田が声を掛けてきた。

「今村くん、時間ある?委員会のことで——」

「委員会?あぁ良いですよ」

「そうですか。それではお付き合いください」

 緊張しているようで両手の五指を合わせながらもじもじさせている彼女。

 茶髪のストレートにさせ毛先辺りを内巻きにしている猫目の彼女に呼び止められ、どきりとした。

 教室を出ようとする扉の付近で僕を捉える視線があったからだ。

 佐渡嘉音だ。

 佐渡は下唇を噛み、逃げ去るように教室を出ていく。

 佐渡を呼び止める余裕もなく、桜田から右手の甲に手を重ねられ、動揺する。

 僕は桜田に促され、伴い空き教室に赴いた。


 15分程桜田と空き教室で委員会の話題を交わしてから彼女と別れた。

 下駄箱に到着すると横から声を掛けられた。

 昨日佐渡について尋ねた谷戸宇だった。

「今村くんだよね?さっき嘉音ちゃんにあったけど不機嫌そうに泣きそうだったけど……なにかした?」

「えっ?さっぱり分からないです。僕は急いでて」

「そう。呼び止めてごめんね。今村くんかと思って。さようなら」

 僕は校舎を出ていく谷戸宇の背中を見届けてから下駄箱の扉を開け、スニーカーを取り出す。

 スニーカーを落とし、スリッパから履き替え、下駄箱の扉を閉めた。


 昇降口を抜け、帰宅した。


 僕が自宅に到着し、玄関扉が施錠されているか確認したら開いていた。

 鍵穴は壊されていない。

 母親か、もう帰宅したのか?

 疑いながら開けると、学生もののローファーが揃えて脱いであり、正面に佐渡が居た。

「ええっ!!なんで佐渡さんが誰も居ない自宅にいるの!?不法侵入だよね……?」

「今村くんのお母様から鍵を預かったんだ。啓治と昨日シたこと、シたくて。友達だったらお母様ってばあっさり貸してくれたんだ。桜田さんとナニカ、した?」


 母さんってば、何してんの?

 信頼するの、げき早過ぎでしょ。


 僕は背筋を凍らせ、彼女をリビングに促し、上がった。

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