第16話
黒青が屋敷の玄関ポーチに近づくと、そこには猫たちがずらりと並んで座っていた。昼寝の途中を起こされたような顔をしている猫もいれば、真剣な眼差しで彼女を見つめている猫もいた。
「……ただいま」
彼女がそう声をかけると、猫たちは一斉に体をふるわせ、瞬く間に人外の猫娘へと姿を変えた。猫耳をピンと立て、仕立ての良いメイド服に身を包んだ彼女たちは、整然と並び直して、声をそろえて言った。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
その光景に、黒青は思わず少し感動した。まるで、自分の存在が丁寧に扱われているようで、ここが「自分の場所」だと実感させてくれる瞬間だった。
メイドの一人が前に出て、穏やかに告げた。
「お食事はお部屋に運んでおきました。今日はお疲れだと思いますので、そのままお部屋でお休みになれますようにご用意しております」
別の猫娘が続ける。
「お部屋は、館の中のどこでもお使いください。来客用の部屋は別棟にございますので、館内にはお嬢様のプライベートな関係者以外はおりません」
「私たちは、お嬢様の身の回りのお世話をするために存在しております。どうぞご安心くださいませ」
その言葉に、黒青は静かにうなずいた。
「……わかった。ありがとう」
猫耳がぴくりと動き、全員が深々とお辞儀をした。屋敷の中から、やわらかな光と静けさが流れてくる。
黒青はその空気に身を委ねながら、静かに屋敷の中へと歩みを進めた。
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