第14話
この屋敷は、彼女――黒青のために現れたものだった。
誰かが建てたわけでもない。誰かが与えたわけでもない。ただ、彼女がこの世界を歩き、考え、選び、拒み、そして受け入れたことで、世界の側が「ふさわしい」と判断した。それがこの屋敷の正体だった。
この世界では、人の居場所は「与えられるもの」ではない。選ばれるのでも、征服するのでもない。行動や言葉、そして思考の軌跡が、世界に跡を刻んでいく。そしてその跡が、やがて一つの「場所」をつくる。
黒青の居場所は、この空間のどこかに突然現れたわけではない。彼女の心と、それに付随する選択の集積が、形を成していった。
その結果として現れたのが、この屋敷だった。
門が自動で開いたのも、彼女の存在を「鍵」として認識していたから。誰も説明していないのに、彼女にはすぐに分かった。この場所が、まるで昔から自分の帰るべき場所であったかのように、しっくりと感じられたのだ。
この世界は、彼女のように「理解せずに従う」のではなく、「疑いながら受け入れる」者を歓迎する。そして、居場所を持つ資格があると認めた者には、それ相応の空間を返す。
だからこの屋敷は、彼女の家なのだった。
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